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当院での肥満症治療

食行動の特徴をふまえた治療

 肥満症の治療の中心は、食事療法と運動療法です。これは誰もが分かっていらっしゃることと思います。そして、分かってはいるけどそれがうまくいかずに苦しんでいらっしゃることでしょう。肥満症の患者さんには特有の食行動の問題点が見受けられます。たとえば、”お腹いっぱいでも、好きなものなら別のところに入る”という満腹感覚の「ずれ」、”たくさん食べているにも関わらず、自分の食べた量はそれほどでもない”と答える摂食量に対する「ずれ」があります。また”目の前に食べ物があれば、つい手が出てしまう”、”いらいらするとつい食べてしまう”といった食行動の悪い「くせ」があります。このような認識の「ずれ」や食行動の「くせ」を自分でも認識していただくよう食行動質問表というアンケートを行います。

体重測定の実践

 一般的に、肥満の方は体重を測る習慣がなかったり、体重を測りたがりません。そこで、まず体重測定を習慣化させることが肥満症治療の第一歩であると考えます。当院ではグラフ化体重日記という用紙を用い、1日4回体重を測定していただきます。起床直後、朝食直後、夕食直後、就寝直前という時間帯に体重を測っていただき、それを記録してグラフ化します。1日のうちでも体重は細かく増減しますが、健常者であればこのグラフ化したときの波形が、ある一定のパターンをとります。その一般的な波形からどれくらい逸脱しているかで、その患者さんのライフスタイルの問題点を抽出することができます。また、その問題点を自分自身で視覚的に認識することができ、食行動の修正につながるのです。

生活リズムの修正の意義

 肥満動物の実験では、時計遺伝子を操作したマウスでは、日内リズム破綻とともに肥満になることが分かっています。逆に、高脂肪食でも時間を制限して摂取させると、体重や代謝状態は普通食を自由に摂取させた場合と変わりないことも判明しています。つまり生活リズムの破綻はエネルギー収支や、脂肪合成、分解にも影響があるわけです。実際に、朝食の欠食、夕食時間の遅延などは肥満の方によく見られる食行動パターンであり、夜型のライフスタイルの定着は明らかに肥満リスクを増大させる一因となっています。当院では生活スタイルについても睡眠、食事、感触のタイミングをグラフ化して、生活リズムについても視覚的に本人に認識していただくようにしています。

早食いの是正

 肥満の患者さんはおおむね「早食い」です。ちなみに私も早食いのくせがなかなか直らず苦労しております。幼少期から習慣化した早食いを是正することは簡単ではありません。

 咀嚼(噛むこと)はなぜいいのでしょうか。咀嚼することによってヒスタミンが分泌されるのですが、このヒスタミンが視床下部にある満腹中枢に働きかけて満腹感を起こさせるわけです。ラットを使ったこんな実験があります。固形食を噛ませて摂食させたラットでは、ヒスタミンが満腹中枢を刺激させて満腹感を亢進させます。しかし、同カロリー数の液体食をチューブで強制的に胃内に注入し、ラットが噛めないようにすると、満腹中枢は興奮しないので、満腹感も感じなくなってしまいます。つまり、カロリーではなく、咀嚼することで初めて満腹中枢のヒスタミンが分泌され、満腹感を感じるようになるわけです。

 咀嚼することで実際に食事量を減らすことが可能なのかという実験も行われています。健康な非肥満の若い男女を2つのグループに分けて、片方のグループには食事前にカロリーや匂いのないデンタルガムを10分間噛んでから食事をしてもらい、もう片方のグループにはガムを噛まずに食事をしてもらうと、食事摂取量はガムを噛んでから食事したグループのほうが少ない量で満腹になりました。1週間後にグループを入れ替えて同じようにしてもガムを噛んだグループのほうがやはり摂取量は少なくなりました。このように、よく噛んで食べれば、カロリーを多く摂取しなくても、満腹になることが証明されています。

 当院では一口につき30回咀嚼してから飲み込むように「30回咀嚼用紙」というものを導入して、患者さんに記載をしていただいております。

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