2005年にアメリカ国立健康研究所、国立ガン研究所、国立食品医薬品局の科学者達は共同で「高濃度のビタミンCはガン細胞を殺す」という論文をアメリカ科学アカデミー紀要に発表しました。続いて、2006年3月には高濃度ビタミンC点滴療法で長期生存を続けている3人のガン患者さんについての論文がカナダ医師会雑誌に発表されました。さらに2007年には「高濃度ビタミンC点滴療法がガン患者の痛み、倦怠感、食欲低下、不眠などの諸症状を改善し、QOL (生活の質)を改善する」と韓国医師会雑誌に論文が発表されています。そして、現在はアメリカやカナダの多くの医師らが高濃度ビタミンC点滴療法をガン患者に行うようになり、この治療を受ける患者の数は急増しています。
研究面でもカンザス大学、ジェファーソン大学、アメリカの民間ガン専門総合病院グループはそれぞれアメリカ国立健康研究所の認可を得て卵巣ガン、悪性リンパ腫、すい臓ガン、末期ガンに対する高濃度ビタミンC点滴療法の効果について臨床研究が開始もしくは予定され、韓国では白血病に対する臨床研究が始まっています。
高濃度ビタミンC点滴療法が適応となるのは(1)標準的がん治療が無効の場合、(2)標準的がん治療の効果をより確実にする、(3)標準的癌治療の副作用を少なくする、(4)良好な体調を維持しながら寛解期を延長させる、(5)代替治療を希望する場合などです。有効な抗がん剤や放射線治療がある場合は併用を推奨します。
この治療が有効な癌の種類についてはまだ研究段階です。
最初はビタミンC12.5gから点滴を始め、25g、50gと増量します。血液中のビタミンC濃度を測定し、投与するビタミンCの理想的な投与量を決定します。典型的な例では週に2回の点滴で3ヶ月継続、その後の経過が良ければ週1回を3ヶ月、さらに2週に1回を1年間、その後は月に1回行います。ビタミンCの量と点滴頻度は病状によって変えていきます。治療継続により免疫システムの増強、がん性疼痛の軽減、食欲の改善や体調の改善が期待できます。
特に、ビタミンC製剤はUSP-1079条項で2℃〜8℃の冷蔵保管・輸送が義務づけられ、米国国内では全て製造から医療機関に納付されるまで冷蔵を保たなければなりません。これは日本薬局方で【保存:禁凍結10℃以下】に指定されているインフルエンザワクチンやインターフェロン(ビオガンマ)と同じ取り扱いです。当院で使用しているマイラン社製のビタミンC製剤は厳密な温度管理が可能な大型保冷コンテナを使用し、工場から成田空港に毎月1回輸送しています。これにより日本で唯一、FDAとUSP(米国薬局方)を完全遵守した冷蔵輸送が可能となりました。
アメリカのカンザス州にある国際人間機能改善センターは高濃度ビタミンC点滴療法で有名な施設ですが、これまでの15年間に3万件以上の高濃度ビタミンC点滴療法を実施し、副作用によって死亡に至った例はありません。実際には殆ど副作用のない安全な治療です。
点滴中に針を指した場所から血管にそって痛みが出ることがあります。点滴の速度は速すぎることが原因のため、速度を調整します。
G6PD欠損症という赤血球膜の遺伝性酵素異常がある方は赤血球が壊れてしまう溶血性貧血を起こすため、この治療を受けることができません。必ず初回にG6PDの酵素活性を測る検査が必要になります。
高濃度ビタミンC点滴療法終了後の数時間は、簡易血糖測定器で測る血糖値が高値になります。これは見かけ上高いだけで、実際の血糖値はもっと低い値になります。したがって自己血糖測定をしてインシュリンの注射量を決めている糖尿病患者ではインシュリンの量に注意しなければなりません。
透析中の腎不全の方はこの治療を受けることはできません。心不全、大量の腹水、強い浮腫のある方は、点滴で水分を血管内に入れることで病状の悪化を来す恐れがあるためにこの治療ができない場合があります。