誤飲の症状
- 何かを飲み込んだあとに突然咳が始まったり、声のかすれや喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒューした呼吸の音)が出ます。また、呼吸を苦しがったりする場合もあります。これは、空気の通り道(のどや肺)に異物がとどまっている可能性があります。空気が通りにくくなり、窒息や重症の肺炎となってしまう可能性もあります。
- 食道に異物がある場合、うまく通過することができずに、つばを飲み込めずよだれが出ている、飲み込む時に痛みがある、水分や固形物が飲み込めない、吐き気、嘔吐などの症状が出てきます。
- 異物が大きいと胸部の不快感や痛みを訴えることがあります。
- 言葉で訴えることのできない子どもさんでは、不機嫌に泣く、母乳やミルクを飲まなくなるなどが症状の可能性があります。
- 胃の中に異物が進むと、症状はほとんどありません。ただし、先端が鋭利な異物では出血、腹痛などの症状が出ることもあるため、異物の特定が重要になります。
- 体内で吸収できる異物誤飲では、タバコ、医薬品、洗剤、防虫剤、乾燥剤などがあります。成分が体に吸収されることにより、それぞれの中毒症状が出てくる可能性があります。
- 異物誤飲の可能性があり、顔色が蒼白い、ぐったりしている、けいれん、意識がないなどの症状がある場合には、異物誤飲を疑って対応しましょう。
誤嚥・誤飲しやすい飲み物と食べ物
消費者庁の調査では、原因となった食品が明らかになっているものでは乳やゼリー、ドーナツ、あめなどのお菓子類でした。
誤嚥ランキング(食べ物)
1位 乳(0歳児がほとんどです)
2位 お菓子(ゼリー、ドーナツ、あめなど)
3位 肉・魚
4位 果物(リンゴ、ブドウなど)
5位 パン・ごはん
※厚生労働省の人口動態調査の調査票情報をもとにした消費者庁の独自調査より
誤飲ランキング(食べ物以外)
1位 たばこ(未使用のたばこ、吸い殻、 空き瓶等にたまっているたばこの溶液など)
2位 くすり
3位 おもちゃ
4位 プラスチック製品
5位 金属製品
※「家庭用品等に係る健康被害病院モニター報告」より
子どもにとってタバコは非常に危険な物です。たばこに含まれるニコチンは毒性が非常に強く、子どもでは半分から1本分のたばこのニコチンで死の危険があります。
受動喫煙の問題が多く取り上げられますが、たばこが子どもの事故につながることは覚えておきましょう。特にジュースの空き缶等に吸いがらを捨てていることには注意が必要です。たばこが捨てられていた茶色い水を飲んだり、濡れたたばこを食べてしまうことはとても危険です。
くすり
お菓子と間違えてくすりを飲んでしまうという誤飲事故もここ数年で増えています。万が一、薬を飲んでしまったときには「いつ、どの薬を飲んだか?」を、分かるように準備し、急いで救急病院で処置を受けてください。病院で胃洗浄などを行うケースもあります。
電池
特に危険なのはボタン電池です。一般的なアルカリ電池やマンガン電池は、構造上強いアルカリの物質が入っているため、それがもれると胃をあっという間に浸食してしまいます。胃に穴が空いてしまうこともあるのです。また、最近多くなってきたリチウム電池は、電流が流れてしまうおそれがあり、これも危険です。古くなったり使い切って放電しなくなった電池より、新品や使いかけの電池、リチウム電池は危険なのだと覚えておいて下さい。
無症状であっても急いで病院を受診しましょう。
困ったときは『中毒110番』情報提供料:無料
大阪中毒110番(24時間対応) 072-727-2499
つくば中毒(9時~21時対応) 029-852-9999
タバコ専用電話(365日テープでの対応) 072-726-9922
受診ポイント
こんな場合は、救急車を呼んでください。
何かを口の中に入れた直後に、
けいれん
- ぐったりして、呼びかけてもぼんやりしている
- 灯油・ガソリン・ベンジン・除光液・農薬・殺虫剤・ネズミ駆除剤を飲んだ場合
すぐに受診
何かを口の中に入れた直後に、
突然の咳き込み、咳の出現
声がかすれている
喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒューした呼吸の音)
吐く、下痢、腰痛などの症状が出た場合
診療時間内に受診
インク、クレヨン、絵の具、粘土、化粧品(口紅、ファンデーション)、せっけん、シリカゲル(乾燥剤)などは、誤飲をしてもあまり心配ないとされていますが、できるだけ吐かせて取り除きましょう。
おうちケアのポイント
誤飲した物で対応が違います
飲みこんだものを吐かせる方法
指を入れ、舌を押し下げるようにしましょう。
気道にものが詰まった時の対応方法
子どもさんを大人の太ももの上でうつぶせに乗せて、片方の手で顔を支え、頭を胸よりやや低くした状態で、もう片方の手の付け根で、背中の真ん中を何度も連続して強くたたきます。
誤飲は防げます!
- 子どもが口に入れてしまいそうな大きさのものは、届かない場所に置きましょう。子どもの手が届くおおよその範囲は、「物が置いてある台の高さ」と「全身を使って子どもの手が届く長さ」でわかります。例えば、1.5m程度の比較的高い場所に置いてあれば奥側でなくとも手は届きにくいですが、50cm程度の比較的低い場所に置いてあれば、体を伸ばして届いてしまいます。高さと奥行きでの手が届く範囲は年齢によって変わります。
「物が置いてある台の高さ」×「全身を使って子どもの手が届く長さ」は
1歳では90cm
2歳では110cm
3歳では120cm
と言われています。
子どもの成長発達に合わせて手の届かない場所に置き場所を変えるなど、事故予防につとめることがやけどを防ぐことになります。
- 子どもは、食品をかみ砕く力や飲み込む力が未発達のため、豆やナッツ類で窒息することがあります。豆類は5歳以下までは食べさせないようにしましょう。
- 誤飲する大きなかどうかを確認できる「誤飲チェッカー」という道具があります。この誤飲チェッカーの中に入りきるものは飲み込んだり窒息する可能性があります。試飲チェッカーが手元になければ、トイレットペーパーの芯などを使って大きさをはかることも可能です。窒息・誤飲予防につとめましょう。
記事執筆者
きむら内科小児科クリニック
院長 木村仁志
資格
- 日本内科学会総合内科専門医
- 日本腎臓学会腎臓専門医
- 日本透析医学会透析専門医
- なごや認知症安心安全プロジェクトもの忘れ相談医(登録かかりつけ医)
- 日本ACLS協会 BLSヘルスケアプロバイダーコース修了(平成27年7月)
- がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会修了(平成27年9月)
- こどものみかた小児T&Aコース修了(平成27年10月)
- かかりつけ医認知症対応力向上研修終了(平成28年11月)
- かかりつけ医等心の健康対応力向上研修終了(平成28年11月)
所属学会
- 日本内科学会
- 日本腎臓学会
- 日本透析医学会
- 日本プライマリケア連合学会
- 日本抗加齢医学会