腎臓には糸球体という毛細血管が集まった球形の構造体があります。糸球体内の血管は特殊な構造をしていて、小さな穴が空いており、そこから血管内の水分や老廃物が血管外にこしだされ、それが尿のもとになります。
正常な腎臓では老廃物や水分のみがこしだされ、蛋白はその穴よりも大きいためにすり抜けることができず、血管の外に漏れることはありません。しかし、ネフローゼ症候群では、その血管の穴の部分が壊れてしまい、蛋白質が血管から尿のほうへ漏れてしまうために血液中の蛋白質が低下してしまいます。
血管の穴の部分が壊れてしまう原因は、実はまだ解明されていません。ただ、ネフローゼ症候群の治療として使用されるステロイドや免疫抑制薬は免疫を抑える薬剤です。また風邪をきっかけにネフローゼ症候群が再発することから、体の免疫が関係しているのではないかと言われています。今後、原因・病態解明がなされれば、根本治療につながる可能性が高いため、今後の研究の発展が期待されています。
尿検査と血液検査を行い、基準以上の蛋白尿と基準以下の血液中の蛋白濃度(蛋白の一種であるアルブミンも計測します)の二つよりネフローゼ症候群と診断します。さらに、臨床症状、経過なども合わせて「特発性」、「続発性」のどちらがより考えられるか判断します。
「特発性」と「続発性」では治療の種類や期間が異なるため、「特発性」では見られない1歳未満の低年齢の発症、血尿、腎機能障害、高血圧、血液検査で補体という項目の低下、皮疹・発熱などの腎外症状、といった先天性ネフローゼ症候群や慢性糸球体腎炎による「続発性」を疑うべき所見があるときには、必ず腎生検を行い、診断を確定した後に治療を開始します。一方、「特発性」を疑った場合は、その多くが「微小変化型」であり、ステロイドがよく効くことが分かっているため、腎生検は初めから行わず、ステロイドの治療を開始します。一般的に1週間程度で蛋白尿が陰性化すれば「特発性」と診断してよいことになっています。一方4週間の連日のステロイド治療を行っても、蛋白尿が持続する場合は、ステロイド抵抗性ネフローゼ症候群と定義され、腎生検で組織所見を確認し、次の治療を選択します。