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慢性腎臓病の治療|【薬物療法】

慢性腎臓病の治療【薬物療法】|進行を食い止めるための戦略

慢性腎臓病(CKD)の治療において、薬物療法は食事療法と並ぶ重要な柱です。

残念ながら、失われた腎臓の機能を薬で完全に元に戻すことはできません。
しかし、「残っている腎臓の負担を減らす」こと、そして「腎臓が悪くなったことで起きる全身のトラブル(合併症)を防ぐ」ことは、薬の力で十分に可能です。

当院では、腎臓専門医が患者さまの状態に合わせ、以下の3つの目的で薬を使い分けます。

1. 腎臓を守るための治療(高血圧・原因疾患の管理)

腎臓が悪くなる最大の原因は、腎臓にかかる「圧力(血圧)」や「糖のダメージ」です。ここを抑え込むことが、透析を遠ざける一番の近道です。

■血圧のコントロール(最重要)

高血圧は腎臓の血管を傷つけ、機能を低下させます。逆に、腎臓が悪くなると血圧が上がるという「負のスパイラル」に陥ります。

当院では、単に血圧を下げるだけでなく、「腎臓保護作用」のある降圧薬(ACE阻害薬やARBなど)を優先的に使用し、腎臓への負担を和らげる戦略的な治療を行います。

■血糖・脂質のコントロール

糖尿病や脂質異常症がある場合は、血管へのダメージを防ぐため、それらの数値を適正に保つ薬を使用します。

2. 腎性貧血の治療(心臓を守る)

腎臓は、赤血球を作る指令を出すホルモン(エリスロポエチン)を出しています。腎機能が低下すると、この指令が出なくなり「腎性貧血」になります。

貧血を放置すると、酸欠になった全身に血液を送ろうとして心臓が過労状態になり、心不全のリスクが高まります。

■使用する薬剤
  • ESA製剤(注射薬): 不足しているホルモンを補う注射です。
  • HIF-PH阻害薬(飲み薬): 2019年に登場した新しい薬で、体が自らホルモンを出せるようにスイッチを入れる働きがあります。

当院では、注射と飲み薬を適切に使い分け、貧血を改善して心臓と腎臓の両方を守ります。

3. 体内バランスの調整(カリウム・リン・尿毒素)

腎臓のろ過機能が落ちると、本来尿として捨てるべき成分が体内に溜まってしまいます。

■カリウム吸着薬

野菜や果物に含まれるカリウムが高くなりすぎると、不整脈を起こし命に関わります。食事療法でコントロールできない場合、腸の中でカリウムを吸着して便として出す薬を使います[5]。

■リン吸着薬

リンが体内に溜まると、骨がもろくなったり、血管が石灰化(石のように硬くなる)したりします。余分なリンを吸着し、体外へ出す薬を使用します。

■球形吸着炭(尿毒素吸着薬)

体内に溜まった毒素(尿毒素)を炭の力で吸着し、便と一緒に排泄させることで、尿毒症症状を改善し、透析導入を遅らせる効果が期待できます。

専門医による「オーダーメイド」の処方

慢性腎臓病の薬物療法は、ステージや合併症の有無によって使うべき薬が細かく異なります。

「血圧の薬」「貧血の薬」「毒素を出す薬」。
これらを患者さま一人ひとりの状態に合わせて最適に組み合わせ、副作用にも配慮しながら、今のあなたの腎臓を最大限に長持ちさせる処方を考えるのが、腎臓専門医の役割です。

お薬の量や種類について不安なことがある方は、お気軽にご相談ください。

記事執筆者

きむら内科小児科クリニック

院長 木村仁志

資格
  • 日本内科学会総合内科専門医
  • 日本腎臓学会腎臓専門医
  • 日本透析医学会透析専門医
  • なごや認知症安心安全プロジェクトもの忘れ相談医(登録かかりつけ医)
  • 日本ACLS協会 BLSヘルスケアプロバイダーコース修了(平成27年7月)
  • がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会修了(平成27年9月)
  • こどものみかた小児T&Aコース修了(平成27年10月)
  • かかりつけ医認知症対応力向上研修終了(平成28年11月)
  • かかりつけ医等心の健康対応力向上研修終了(平成28年11月)
所属学会
  • 日本内科学会
  • 日本腎臓学会
  • 日本透析医学会
  • 日本プライマリケア連合学会
  • 日本抗加齢医学会