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慢性腎臓病 セルフチェック

慢性腎臓病のセルフチェック

  • 寝ている時トイレに起きる回数が増えた
  • 起きている時に頻尿になった
  • 尿の出が悪い、色が赤い、泡立つなど、尿の異常があると感じる
  • 健康診断で尿たんぱくの項目が「1+」、または「2+」と判定されている
  • 高血圧と診断されている
  • メタボリックシンドロームまたは肥満と健康診断で言われている、または該当する
  • むくみがあると感じる
  • 立ちくらみがある
  • 疲れやすくだるい
  • いつも息が切れたような感じがする

いかがでしたでしょうか。上記に一つでも当てはまる場合や、日常生活で気になっていることなどある場合、腎臓病の専門医がいる医療機関に相談することが必要です。腎臓の働きが悪くなっても、初期段階では自覚症状はほとんど現れませんが、病気が進行するにしたがって、セルフチェックにあるような症状が現れます。

尿の変化

寝ている時トイレに起きる回数が増える夜間尿は、腎機能が低下してくると最初にみられることの多い症状です。腎臓の濃縮力が低下することで尿量が増えるため、睡眠時トイレに起きる回数が増えます。起きている時も腎臓の機能が悪化してくると頻尿になることが多いです。さらに腎臓病が進行すると逆に尿の出が悪くなります。

また、慢性腎臓病を診断する上で重要なのが「たんぱく尿」です。たんぱく尿とは、尿の中に必要以上のたんぱく質が含まれてしまうことです。尿が泡立つ場合はたんぱく尿の可能性がありますが、そのようなものがみられない方も、健康診断でたんぱく尿と判定された場合は速やかに医療機関に相談する必要があります。

高血圧、肥満、メタボリックシンドローム

通常は、食事から摂取した余分な塩分は、水分とともに尿として排出されます。しかし、腎機能が悪くなると、塩分や水分がうまく排出できません。そのため、血液の量が増え、血圧が上がります。高血圧自体は痛みやかゆみ、腫れなどの症状としては現れませんので、自覚症状というものはありませんが、血圧を測る習慣のある方では、ご自身で血圧が高いことに気づくケースがあります。

肥満やメタボリックシンドロームと診断された方も腎臓病を患っている可能性があります。肥満とは、脂肪組織に脂肪が過剰に蓄積した状態でBMIが25以上の状態を指します。メタボリックシンドロームは、ウエスト周囲径が男性85cm・女性90cm以上で、かつ血圧/血糖/脂質の3つのうち2つ以上が基準値から外れる状態です。

  • BMI:体重(kg) ÷ {身長(m) X 身長(m)} 
  • メタボリックシンドロームの基準
必須項目(内臓脂肪蓄積) ウエスト周囲径男性 ≥ 85cm 女性 ≥ 90cm
内臓脂肪面積 男女ともに≥100cm2に相当
選択項目 3項目のうち 2項目以上1高トリグリセライド血症 かつ/または 低HDLコレステロール血症≥ 150mg/dL   < 40mg/dL
2収縮期(最大)血圧 かつ/または 拡張期(最小)血圧≥ 130mmHg   ≥ 85mmHg
3空腹時高血糖≥ 110mg/dL

厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイトeヘルスネット メタボリックシンドロームの診断基準(https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/metabolic/m-01-003.html)より作成

むくみ、立ちくらみ、疲れやすさ、だるさ、息切れ

むくみは、腎臓病がある程度進行してきた段階で現れることが多い症状です。指輪や靴がきつくなります。血圧が高くなるのと同様に、体の中の余分な水分や塩分を体の外に排出できなくなり、水分が血管の外に出てしまいます。これがむくみという症状として現れます。

また、慢性腎臓病が進行すると、立ちくらみや疲れやすさ、息切れという症状が現れることがあります。これは腎臓病による貧血の可能性が高いです。赤血球を作るように指示するホルモンが腎臓で作れなくなるため、骨髄という骨の中にある血液の工場で赤血球が作れなくなり、立ちくらみや貧血が起こりやすくなります。

身体がだるく感じる状態(倦怠感)や息切れは、貧血とは別のメカニズムのこともありますが、これも腎臓が関連しています。腎機能が下がることで血管内の水分量が増え血圧が上がり、結果として心臓に負担がかかるようになります。また、体の外に出せなくなった老廃物が体の中で溜まっていきます。これが疲れやすくなったり常にだるかったりする原因です。

GFR(糸球体濾過量)

慢性腎臓病の初期にはほとんど自覚症状はありません。その裏で密かに腎機能は低下していき、やがて症状が出てきた時には、手遅れになっていることもあります。だからこそ、腎臓病は早期発見が重要です。早めに治療を開始することで腎臓の機能低下を防いだり、遅らせたりすることが可能です。

上で説明した症状は決して激しいものでないことが多いですが、症状以外に血液の「GFR(糸球体濾過量)」というものから腎臓の働きを調べることが可能です。GFRは性別、年齢、血清クレアチニン(Cr)値から計算することができます。Cr値は健診や受診した際の採血で測定します。下記の性別欄にチェック、Crと年齢の空欄にご自分の値を入力してみましょう。

たとえば、「男性、Cr値が0.8、年齢が55歳」という方の場合、上のチェックにこれらを入力して青いボタンを押すと、GFR推算値に78.4と表示されると思います。これは上の分類でいうと、「G2(60~89)で正常または軽度低下」に該当します。G2のうち、A1、A2、A3のどれに該当するのかは、その上に書いてある病気(糖尿病、高血圧、腎炎、多発性嚢胞腎、移植腎、不明、その他)のどれがあるか、たんぱく尿の度合いがどれくらいかによります。

記事執筆者

きむら内科小児科クリニック

院長 木村仁志

資格
  • 日本内科学会総合内科専門医
  • 日本腎臓学会腎臓専門医
  • 日本透析医学会透析専門医
  • なごや認知症安心安全プロジェクトもの忘れ相談医(登録かかりつけ医)
  • 日本ACLS協会 BLSヘルスケアプロバイダーコース修了(平成27年7月)
  • がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会修了(平成27年9月)
  • こどものみかた小児T&Aコース修了(平成27年10月)
  • かかりつけ医認知症対応力向上研修終了(平成28年11月)
  • かかりつけ医等心の健康対応力向上研修終了(平成28年11月)
所属学会
  • 日本内科学会
  • 日本腎臓学会
  • 日本透析医学会
  • 日本プライマリケア連合学会
  • 日本抗加齢医学会