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慢性腎臓病の定義・診断基準

慢性腎臓病の定義・診断基準

慢性腎臓病は、慢性に経過する全ての腎臓病のことで、英語表記Chronic Kidney Diseaseの頭文字を取って「CKD」と略されることもあります。

日本腎臓学会では、慢性腎臓病の定義を次のように定めています。

  • 検査で腎障害が明らかに確認できる
    • 尿検査……たんぱく尿や血尿など
    • 血液検査……腎機能障害が認められるなど
    • 病理……病理検査で組織の異常が認められるなど
    • 画像診断……腎萎縮(じんいしゅく)や多発性のう胞腎 (*2) など
        (*2) 多発性のう胞腎:腎臓にのう胞(水が溜まった袋)がたくさんできるため、腎機能が徐々に低下していく遺伝性疾患。
  • 腎機能を評価する「糸球体ろ過量(GFR値)」が<60mL/分/1.73 m 2
  • 上記のいずれか、または両方が慢性的(3か月以上)続いている

この定義では、腎障害が軽度で自覚症状を感じないような早期の腎機能障害でも慢性腎臓病と判断できるようになっています。

腎機能障害による影響は腎臓だけではありません。腎臓が悪くなると、心筋梗塞など命に関わる心血管疾患の発症リスクの上昇に関わっていることが明らかになっています。
だからこそ、早期発見・早期治療開始がとても重要なのです。

慢性腎臓病の原因となる疾患

慢性腎臓病は慢性腎臓病の原因となる病気によって、予後(病気の経過・結末)が異なります。主な原疾患には次のようなものがあります。

糖尿病性腎症

糖尿病の合併症のひとつで、高血糖が腎機能を低下させます。初期では自覚症状もなく尿たんぱくが出るのみですが、進行すると大量の尿たんぱくが出るようになり、むくみや疲れやすくなります。人工透析導入の原因疾患で一番多い病気です。

IgA腎症

腎臓の糸球体が炎症を起こす「慢性糸球体腎炎」のひとつで、血尿とたんぱく尿が特徴です。はっきりとした原因は不明ですが、扁桃炎・慢性上咽頭炎などが引き起こすきっかけとなり、免疫グロブリン(免疫調整を行うたんぱく質)のIgAが過剰に作られ、糸球体に沈着して腎炎を起こすと考えられています。慢性的な腎機能障害が起こり、人工透析などの治療が必要となることがあります。

高血圧性腎症(腎硬化症)

高血圧によって、腎臓の血管に動脈硬化を引き起こし、血流が悪くなることで、糸球体が次第に硬化していき、腎機能が低下します。
病気の進行が遅い「良性腎硬化症」と急速に症状が悪化する「悪性腎硬化症」があります。良性腎硬化症の多くは、軽度の尿たんぱくが現れます。進行すると、画像検査で腎臓の萎縮が認められることがあります。悪性腎硬化症では、腎機能の急激な悪化のほか、眼底検査・心臓機能検査など様々な部位で異常がみられるようになります。

ほかにも、原因となる疾患は様々あります。
腎臓自体が病気の主体となる「一次性」、腎臓以外の臓器が原因となる「二次性」、遺伝による「遺伝性」での分類方法や、腎臓が障害を受けている部分によって「糸球体性」「血管性」「尿細管間質性」と分類する方法もあります。

慢性腎臓病の重症度分類(ステージ)

CKD診療ガイド2012の中で、慢性腎臓病の重症度分類は「原因(C)×腎機能障害の区分(G)×たんぱく尿区分(A)」のCGA分類からの腎臓の働き具合と、糖尿病・高血圧など腎臓病の原因となる病気やたんぱく尿・アルブミン尿の有無から判断すると示されています(*3) 。なお、CKD治療は重症度に応じて行います。
※尿検査(試験紙)の場合、尿蛋白区分は A1:(-,+-)、A2:(+)、A3:(2+以上)

(*3) (参考)エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018 P.28|日本腎臓学会

腎機能評価-推算GFR(eGFR)について

腎臓の働きは、糸球体ろ過量(GFR)を使って評価します。
GFR値の計算方法は、性別・年齢に加え血清クレアチニン値もしくはシスタチンC値(下肢切断者など極端に筋肉量が少ない場合に選択)を使って割り出します。
18歳以上であれば、推定糸球体ろ過量(eGFR)から評価することが一般的であり、eGFR値は健康診断で測定することもあります。
※eGFRのeはestimated(推測された)という単語の略です。
健康な方のGFR値は、100ml/分/1.73m 2 前後です。
そのため、60ml/分/1.72m 2 未満が持続していれば、腎機能の低下は明らかとなるので「慢性腎臓病」と診断されます。
なお、末期腎不全(透析一歩手前)や透析の段階となると、GFRは15ml/分/1.73m 2 未満まで低下しています。
日本腎臓学会では、以下の計算式で推算値を求めています。
男性 eGFR(ml/分/1.73m 2 )=194×Cr-1.094×年齢(歳)-0.287
女性 eGFR(ml/分/1.73m 2 )=男性のeGFR値×0.739

 
Cr
年齢
GFR推算値
ml/min./1.73m2
GFR区分

記事執筆者

きむら内科小児科クリニック

院長 木村仁志

資格
  • 日本内科学会総合内科専門医
  • 日本腎臓学会腎臓専門医
  • 日本透析医学会透析専門医
  • なごや認知症安心安全プロジェクトもの忘れ相談医(登録かかりつけ医)
  • 日本ACLS協会 BLSヘルスケアプロバイダーコース修了(平成27年7月)
  • がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会修了(平成27年9月)
  • こどものみかた小児T&Aコース修了(平成27年10月)
  • かかりつけ医認知症対応力向上研修終了(平成28年11月)
  • かかりつけ医等心の健康対応力向上研修終了(平成28年11月)
所属学会
  • 日本内科学会
  • 日本腎臓学会
  • 日本透析医学会
  • 日本プライマリケア連合学会
  • 日本抗加齢医学会