症状や尿の状況によって、水分を制限すべきかどうかが変わってきます。尿量の低下がない方は、健康な人と同じように喉の渇きや気温、湿度に応じて水分をとるのが良いとされています。
一方、むくみがある、血圧が高い、尿が出にくくなっている方の場合、すでに体の中の血液量や水分量が多いと考えられますので、厳重な水分制限が必要です。また水分は塩分と密接な関係があり、塩分をとり過ぎるとのどが渇いて、結果的に水分がほしくなるというケースが多くあります。ですので水分制限をする場合は、塩分制限も一緒に行う必要があります。
ただし、高齢になると慢性腎臓病を患っているかどうかに限らず、脱水になりやすい体になりますので、水分の制限しすぎも問題となります。高齢の慢性腎臓病の患者さんがは脱水を合併した状態で利尿薬や鎮痛薬を使用すると様々なリスクがあるので、内服薬にも注意が必要です。
慢性腎臓病では、高血圧や尿たんぱくなどを抑制することが必要となり、これには塩分摂取を抑えることが有効と多くの研究で証明されています。ですので、慢性腎臓病の方では基本的に塩分の制限が必須とされています。1日あたりの塩分摂取量の目安は6 g未満です。塩分と水分はセットでとりすぎることが多いのでその点に注意して制限していきます。
ただし,慢性腎臓病の方が過度に減塩すると、腎臓の機能(糸球体ろ過の機能)が急激に低下する可能性があります。極端な塩分制限は行わず、徐々に制限していくようにしましょう。
たんぱく質の制限
慢性腎臓病の進行を抑制するためには、たんぱく質の摂取量を制限することが推奨されています。制限の基準は慢性腎臓病の進行ステージによって変わります。ステージ別のたんぱく質摂取量の基準は、ステージG3a:0.8~1.0 g/kg標準体重/日,G3b以降:0.6~0.8 g/kg標準体重/日)とされています。ステージG1~G2 でも、過剰なたんぱく質摂取を避けることが推奨されています。
また、高齢者ではたんぱく質摂取制限に伴って低栄養状態となり、日常生活や健康寿命を悪影響を及ぼすことになるというリスクも考えられますので、一定のたんぱく質の摂取は確保すべきといわれています。たんぱく質をどれくらい摂取すべきかというのは、個々の患者さんの年齢や体の状況によって異なりますので、腎臓の専門医や管理栄養士などの指導を受けることが望ましいです。高齢者以外の患者さんでも、通り一遍の指導は適切ではありません。個々の状態、リスク、服薬状況などを総合的に判断して、医師や管理栄養士など専門家の方々と一緒に考えて実施していくことが望ましいです。
カリウムの制限
慢性腎臓病の進行が進むと、血液の中のカリウムの割合が高くなってしまう「高カリウム血症」という病態になることがよくあります。そのため、ステージが進行してからはカリウムを抑える必要も出てきます。ステージG1~G3aまではカリウムの制限はありません。ステージG3bでは2,000 mg/日以下、G4~G5では1,500 mg/日以下を目標とします。
高カリウム血症は、慢性腎臓病が進行して腎臓の機能が悪化するだけでなく、薬剤の副作用、心不全や糖尿病などの合併症といった要素が関連しています。また、たんぱく質を制限することでカリウムも制限されることになるため、単純にカリウムの多い食事をやめればいいというものでもなく、医師や栄養士の指導に従うことが重要となります。
リンの制限
慢性腎臓病の方は、尿としてリンを排出することができなくなり血液の中にリンが多く蓄積されてしまい、やがて「高リン血症」という病態になるケースが多くあります。高リン血症になってしまうと腎機能がさらに低下し、心筋梗塞などの心血管疾患のリスクも上がります。こうしたことから、慢性腎臓病の方ではリンの摂取に気をつける必要があります。リンを多く含む食品は、ハム、ベーコン、練り物、プロセスチーズ、インスタント麺、缶詰、ファストフードなどで、これらの添加物としてリンが含まれますので摂取量に注意が必要です。
運動の制限
肥満やメタボリックシンドロームを伴う慢性腎臓病の方では運動を行うことがすすめられます。肥満やメタボリックシンドロームを直すためには継続的な運動が必要となりますので、どの運動の種類が良いかということよりも、習慣にできる運動の種類が選ぶことが重要です。またどの程度の運動の強度や運動量が良いのかということは、それぞれの患者さんの体調や年齢によって異なりますので、医師や理学療養士による指導を受けるのが良いでしょう。