慢性腎臓病の治療は病気の進行を防いで、少しでも人工透析療法への移行を遅らせることや心血管疾患などの合併症の予防を目的としています。
また、治療では原因となる腎臓の病気そのものに対する治療と共に、生活習慣を改善することが大事です。
生活習慣の改善方法は、食事療法を中心に行い、適度な運動の実施、疲れを溜めない、感染症を予防する、体の冷えに注意する、嗜好品の摂取をほどほどにするようにしましょう。
当院では患者さんとよく話し合いながら、無理なく治療を進めていけるよう心がけています。
食事療法の制限の程度は、慢性腎臓病の原因となっている病気や合併症の有無、年齢によって異なります。
当院では、管理栄養士に指導を受けた看護師と医師による栄養アドバイスを行っております。お気軽にご相談ください。
昔から日本人は欧米に比べて塩分摂取量が多く、厚生労働省の報告では現在では約10gを超えている状況です (*5) 。
(*5) (参考)平成30年「国民健康・栄養調査」の結果|厚生労働省
CKD診療ガイド2012の中で、慢性腎臓病患者さんの1日の基本の塩分摂取量を「3g~6g未満」としています。
なお、実際の制限の程度は患者さんの重症度(ステージ)によって異なりますので、詳しくは医師にご確認ください。
腎臓は塩分を取った分だけ、働かなければなりません。
人間は誰でも塩分を取れば、のどが渇いて水分を取りたくなるように出来ています。
そうすると、体内の水分量が増える→血管内の水分量が増える→血圧が高くなる→腎臓の血管が動脈硬を起こす→腎臓への血流が悪くなるというサイクルが出来てしまい、腎臓へ負担がかかります。
特に慢性腎臓病患者さんは、高血圧によって腎臓への負担が増すことで腎臓障害が悪化し、ろ過しきれずに体液・血液量が増えることから、ますます高血圧を引き起こす
ような「悪循環」が生まれてしまうことに注意しなければいけません。
減塩することで降圧効果が期待できますが、急激に厳しい減塩を行うと体調を崩すことや味気なくて食欲が落ちることもあるので、調理方法など工夫しつつ少しずつ摂取量を落としていきましょう。
<塩分制限のポイント>
腎臓が悪くなると出るようになる「たんぱく尿」ですが、尿にたんぱく質が含まれていること自体が腎臓の組織に障害を与えて、腎臓の働きを低下させます。
そのため、慢性腎臓病の進行を食い止めるには、少しでもたんぱく尿を減らす必要があります。
たんぱく尿を減らすには、食事の際のたんぱく質摂取を制限したり、適切な降圧剤(血圧を下げる薬)を使用したりして、血圧を130/80mmHg以下にするようにします。
降圧剤の中には、尿たんぱくを減らす効果のあるお薬があります。
カリウムは体に重要な電解質の一つで、血圧の調整や酸塩基バランスの調整などを行っています。食事から摂取するカリウムの90%は腎臓からの尿排出となるため、腎機能が低下しているとカリウムが適切に排出されず、血中のカリウム濃度が高くなります。「高カリウム血症」になると、最悪の場合死に至るような不整脈が現れます。また、血圧を下げる薬(RAAS系阻害薬)を服用することでも高カリウム血症を招きやすくなります。
<カリウム制限のポイント>
腎機能の重症度によって、摂取量目安が異なります。
※重症度については、「慢性腎臓病の重症度分類(ステージ)」の項目をご参照ください。
なお、健常な日本人の塩分・たんぱく質・カリウムの摂取推奨量(目標値) (*6) は次の通り
です。
(*6) (参考)日本人の食事摂取基準2020年版(塩分P.270、たんぱく質P.109、カリウムP.274)|厚生労働省
継続的に運動を行うことで、運動耐容能(運動にどのくらい耐えられるか?)を増加させ、慢性腎臓病患者さんのQOL(生活の質)・ADL(日常生活動作)を改善させます。
また、肥満の解消(減量効果)だけでなく、糖尿病や高血圧などの生活習慣病の発症・悪化を抑える効果も期待できます。
さらに近年では適度な有酸素運動によって、尿たんぱくが減少したなどの効果がみられたとする報告もあります (*7) 。
(*7) (参考)慢性腎臓病(CKD)への運動療法のエビデンス|日児腎誌 Vol.25 No.1
無理のない範囲で積極的に運動療法を取り入れましょう。
※患者さんの年齢・合併症の有無・体調などによって、運動が推奨されない場合もあります。
必ず医師と相談してから始めましょう。
<運動療法のポイント>
(参考)腎臓リハビリテーションガイドライン|日本腎臓リハビリテーション学会