慢性腎臓病は、慢性に経過する全ての腎臓病のことで、英語表記Chronic Kidney Diseaseの頭文字を取って「CKD」と略されることもあります。
日本腎臓学会では、慢性腎臓病の定義を次のように定めています。
この定義では、腎障害が軽度で自覚症状を感じないような早期の腎機能障害でも慢性腎臓病と判断できるようになっています。
腎機能障害による影響は腎臓だけではありません。腎臓が悪くなると、心筋梗塞など命に関わる心血管疾患の発症リスクの上昇に関わっていることが明らかになっています。
だからこそ、早期発見・早期治療開始がとても重要なのです。
慢性腎臓病は慢性腎臓病の原因となる病気によって、予後(病気の経過・結末)が異なります。主な原疾患には次のようなものがあります。
糖尿病の合併症のひとつで、高血糖が腎機能を低下させます。初期では自覚症状もなく尿たんぱくが出るのみですが、進行すると大量の尿たんぱくが出るようになり、むくみや疲れやすくなります。人工透析導入の原因疾患で一番多い病気です。
腎臓の糸球体が炎症を起こす「慢性糸球体腎炎」のひとつで、血尿とたんぱく尿が特徴です。はっきりとした原因は不明ですが、扁桃炎・慢性上咽頭炎などが引き起こすきっかけとなり、免疫グロブリン(免疫調整を行うたんぱく質)のIgAが過剰に作られ、糸球体に沈着して腎炎を起こすと考えられています。慢性的な腎機能障害が起こり、人工透析などの治療が必要となることがあります。
高血圧によって、腎臓の血管に動脈硬化を引き起こし、血流が悪くなることで、糸球体が次第に硬化していき、腎機能が低下します。
病気の進行が遅い「良性腎硬化症」と急速に症状が悪化する「悪性腎硬化症」があります。良性腎硬化症の多くは、軽度の尿たんぱくが現れます。進行すると、画像検査で腎臓の萎縮が認められることがあります。悪性腎硬化症では、腎機能の急激な悪化のほか、眼底検査・心臓機能検査など様々な部位で異常がみられるようになります。
ほかにも、原因となる疾患は様々あります。
腎臓自体が病気の主体となる「一次性」、腎臓以外の臓器が原因となる「二次性」、遺伝による「遺伝性」での分類方法や、腎臓が障害を受けている部分によって「糸球体性」「血管性」「尿細管間質性」と分類する方法もあります。
CKD診療ガイド2012の中で、慢性腎臓病の重症度分類は「原因(C)×腎機能障害の区分(G)×たんぱく尿区分(A)」のCGA分類からの腎臓の働き具合と、糖尿病・高血圧など腎臓病の原因となる病気やたんぱく尿・アルブミン尿の有無から判断すると示されています(*3) 。なお、CKD治療は重症度に応じて行います。
※尿検査(試験紙)の場合、尿蛋白区分は A1:(-,+-)、A2:(+)、A3:(2+以上)
(*3) (参考)エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018 P.28|日本腎臓学会
腎臓の働きは、糸球体ろ過量(GFR)を使って評価します。
GFR値の計算方法は、性別・年齢に加え血清クレアチニン値もしくはシスタチンC値(下肢切断者など極端に筋肉量が少ない場合に選択)を使って割り出します。
18歳以上であれば、推定糸球体ろ過量(eGFR)から評価することが一般的であり、eGFR値は健康診断で測定することもあります。
※eGFRのeはestimated(推測された)という単語の略です。
健康な方のGFR値は、100ml/分/1.73m 2 前後です。
そのため、60ml/分/1.72m 2 未満が持続していれば、腎機能の低下は明らかとなるので「慢性腎臓病」と診断されます。
なお、末期腎不全(透析一歩手前)や透析の段階となると、GFRは15ml/分/1.73m 2 未満まで低下しています。
日本腎臓学会では、以下の計算式で推算値を求めています。
男性 eGFR(ml/分/1.73m 2 )=194×Cr-1.094×年齢(歳)-0.287
女性 eGFR(ml/分/1.73m 2 )=男性のeGFR値×0.739