慢性腎臓病(CKD)の治療において、薬物療法は食事療法と並ぶ重要な柱です。
残念ながら、失われた腎臓の機能を薬で完全に元に戻すことはできません。
しかし、「残っている腎臓の負担を減らす」こと、そして「腎臓が悪くなったことで起きる全身のトラブル(合併症)を防ぐ」ことは、薬の力で十分に可能です。
当院では、腎臓専門医が患者さまの状態に合わせ、以下の3つの目的で薬を使い分けます。
腎臓が悪くなる最大の原因は、腎臓にかかる「圧力(血圧)」や「糖のダメージ」です。ここを抑え込むことが、透析を遠ざける一番の近道です。
高血圧は腎臓の血管を傷つけ、機能を低下させます。逆に、腎臓が悪くなると血圧が上がるという「負のスパイラル」に陥ります。
当院では、単に血圧を下げるだけでなく、「腎臓保護作用」のある降圧薬(ACE阻害薬やARBなど)を優先的に使用し、腎臓への負担を和らげる戦略的な治療を行います。
糖尿病や脂質異常症がある場合は、血管へのダメージを防ぐため、それらの数値を適正に保つ薬を使用します。
腎臓は、赤血球を作る指令を出すホルモン(エリスロポエチン)を出しています。腎機能が低下すると、この指令が出なくなり「腎性貧血」になります。
貧血を放置すると、酸欠になった全身に血液を送ろうとして心臓が過労状態になり、心不全のリスクが高まります。
当院では、注射と飲み薬を適切に使い分け、貧血を改善して心臓と腎臓の両方を守ります。
腎臓のろ過機能が落ちると、本来尿として捨てるべき成分が体内に溜まってしまいます。
野菜や果物に含まれるカリウムが高くなりすぎると、不整脈を起こし命に関わります。食事療法でコントロールできない場合、腸の中でカリウムを吸着して便として出す薬を使います[5]。
リンが体内に溜まると、骨がもろくなったり、血管が石灰化(石のように硬くなる)したりします。余分なリンを吸着し、体外へ出す薬を使用します。
体内に溜まった毒素(尿毒素)を炭の力で吸着し、便と一緒に排泄させることで、尿毒症症状を改善し、透析導入を遅らせる効果が期待できます。
慢性腎臓病の薬物療法は、ステージや合併症の有無によって使うべき薬が細かく異なります。
「血圧の薬」「貧血の薬」「毒素を出す薬」。
これらを患者さま一人ひとりの状態に合わせて最適に組み合わせ、副作用にも配慮しながら、今のあなたの腎臓を最大限に長持ちさせる処方を考えるのが、腎臓専門医の役割です。
お薬の量や種類について不安なことがある方は、お気軽にご相談ください。