慢性腎臓病は、慢性に経過する全ての腎臓病のことで、英語表記Chronic Kidney Disease
の頭文字を取って「CKD」と略されることもあります。
腎臓病は、主に老廃物をろ過する働きを行う腎臓の糸球体(しきゅうたい)や尿細管の障害によって、腎臓の働きが悪くなる病気です。
「慢性腎臓病」は、自覚症状がないまま腎臓の機能が低下している状態、またはたんぱく尿などの検尿異常が3か月以上続くことで、慢性に腎機能が低下するすべての腎臓病のことを指します。
原因となる腎臓の病気のほか、高血圧・糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病やメタボリックシンドローム、加齢、喫煙、遺伝など様々な原因によって、腎機能の低下が引き起こされます。慢性腎臓病になりやすい方は、「肥満の方」「脂質異常症の方」「糖尿病の方」
「喫煙者」「高血圧の方」「ご家族に腎臓病がいらっしゃる方」「高齢者」です。
日本腎臓学会「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018」によると、慢性腎臓病(CKD)の推定患者数は約1,330万人 (*1) であり、これは成人の約13%に当たる数と報告しています。特に高齢者ではCKDの有病率が高く、80代になると約50%の方がCKDに該当するとされます。
(*1) (参考)エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018 P.1|日本腎臓学会
腎臓は様々な働きをしている臓器なので、腎機能が悪くなると体のあちこちに影響が及びます。尿として老廃物を出せないことで体内に毒素が溜まるほか、貧血や骨をもろくしたり、心血管疾患の発病リスクを高めたりするなど、命に関わる危険な状態を招く恐れがあります。
また、腎臓は一度悪くなると、回復が見込めないケースがほとんどという点も忘れてはいけません。著しく機能が低下した場合には、生きるために人工透析などの腎代替療法が必要となります。そのためにも、腎臓病の「早期発見・早期治療」が重要です。
慢性腎臓病は、食事療法・運動療法など「生活習慣の改善」と、進行や合併症予防・原因となる腎臓の病気の治療などに対する「薬物治療」を併用して治療を行います。
このように、CKDは生活習慣の改善や、ステージに応じた食事療法、血圧・血糖・脂質などの総合的な治療が必要です。健康診断など検尿で引っ掛かった方、ご自身の尿が気になり始めた方、ご家族に腎臓病の方がいて心配な方など、お気軽に当院までご相談ください。
腎臓の働きを調べるには、GFR(糸球体濾過量)という値を計算します。
GFRは性別、年齢、血清クレアチニン(Cr)値から計算することができます。
血清クレアチニン(Cr)値は健診や受診した際の採血で測定します。
下記の性別欄にチェック、Crと年齢の空欄にご自分の値を入力してみましょう。
たとえば、「男性、Cr値が0.8、年齢が55歳」という方の場合、上のチェックにこれらを入力して青いボタンを押すと、GFR推算値に78.4と表示されると思います。これは上の分類でいうと、「G2(60~89)で正常または軽度低下」に該当します。G2のうち、A1、A2、A3のどれに該当するのかは、その上に書いてある病気(糖尿病、高血圧、腎炎、多発性嚢胞腎、移植腎、不明、その他)のどれがあるか、たんぱく尿の度合いがどれくらいかによります。
「慢性腎臓病(CKD」」という病気の概念は、2002年にアメリカで初めて提唱されました。当初はGFR推算値だけで分類されていましたが、同じGFRの値であっても尿たんぱく量や原因の病気によってリスクが異なることがわかり、上にあるような現在の表の分類になりました。つまり、CKDの可能性がある場合、今後起こりうるリスクを考えると、ほかの病気を踏まえて治療していくことが大切です。
CKDは病気が進行すると透析などが必要となります。2013年の調査では、全国民の約400人に 1 人が透析しているというデータが発表されました。この背景には、膨大な数の透析予備軍が存在すると考えられています。