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慢性腎臓病(CKD)とは?|専門医が解説

慢性腎臓病(CKD)とは?

慢性腎臓病は、慢性に経過する全ての腎臓病の総称です。英語表記である「Chronic Kidney Disease」の頭文字を取って、一般的に「CKD」と略されます。

腎臓は、血液中の老廃物をろ過して尿をつくる工場のような臓器です。主にろ過装置である「糸球体(しきゅうたい)」や、尿の通り道である「尿細管」が障害を受けることで、その働きが悪くなってしまいます。

1. 慢性腎臓病(CKD)の定義

「慢性腎臓病」とは、自覚症状の有無にかかわらず、以下のいずれか(または両方)が3ヶ月以上続いている状態を指します。

■腎臓の働きが低下している

血液検査の数値(eGFR:推算糸球体ろ過量)が60未満に低下している状態です。

■腎障害がある(検尿異常など)

尿検査で「たんぱく尿」などの異常が出ている状態です。これは、腎臓のフィルターが目詰まりしたり、壊れたりしているサインです。

2. 原因とリスク要因

腎臓病の原因は、腎炎などの腎臓自体の病気だけではありません。
近年では、生活習慣病や加齢が原因で腎機能が低下するケースが非常に増えています。

■主な原因・悪化要因
  • 生活習慣病(高血圧・糖尿病・脂質異常症)
  • メタボリックシンドローム
  • 加齢(高齢化)
  • 喫煙習慣
  • 遺伝的要因(ご家族に腎臓病の方がいる)

3. 慢性腎臓病になりやすい方

以下に当てはまる方は、腎機能が低下しやすい傾向にあります。定期的な検査をお勧めします。

  • 肥満の方
  • 脂質異常症(コレステロールや中性脂肪が高い)の方
  • 糖尿病の方
  • 高血圧の方
  • タバコを吸われる方(喫煙者)
  • ご家族に腎臓病の方がいらっしゃる方
  • 高齢者の方

4. 日本における患者数(新たな国民病)

日本腎臓学会「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018」によると、日本における慢性腎臓病(CKD)の推計患者数は約1,330万人(*1)と報告されています。

これは成人の約13%(およそ8人に1人)にあたる数であり、CKDは誰もがかかりうる「新たな国民病」といえます。

■高齢になるほどリスクは上昇します

腎機能は加齢とともに低下する傾向があるため、高齢者ではCKDの有病率が高くなります。80代になると、約50%(2人に1人)の方がCKDに該当するとされています。

(*1) 参考:エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018 P.1|日本腎臓学会

CKDは透析の予備軍

慢性腎臓病(CKD)は、進行すると腎臓の機能が失われ、生きていくために「人工透析」や「腎移植」が必要となる病気です。

現在、日本には膨大な数の「透析予備軍」がいると言われています。「自分はまだ大丈夫」と思わずに、正しい知識を持って早期に対策することが大切です。

1. 「慢性腎臓病(CKD)」という概念の誕生

「慢性腎臓病(CKD)」という病気の概念は、2002年にアメリカで初めて提唱されました。それまでは腎炎など個別の病名で呼ばれていましたが、腎機能低下の総称として定義されるようになりました。

■分類方法の変化(GFRから総合評価へ)

当初は、血液検査でわかる「eGFR(腎臓の点数)」の推算値だけで分類されていました。しかし、研究が進むにつれて、以下のことが分かってきました。

  • 同じeGFR(点数)であっても、尿たんぱくの量が多い人はリスクが高い
  • 原因となる病気(糖尿病など)によって、進行スピードが異なる

そのため、現在は「eGFR」だけでなく、「尿たんぱく」や「原因」を組み合わせた表を用いて、より細かくリスクを評価するようになっています。

2. 膨大な数の「透析予備軍」

CKDが進行し、腎臓が働かなくなると、人工透析が必要になります。

2013年の調査では、「全国民の約400人に1人が透析をしている」というデータが発表されました[1]。この数字の背景には、すでに腎機能が低下し始めている膨大な数の「透析予備軍」が存在すると考えられています。

■予備軍は「成人の5人に1人」

近年の調査では、慢性腎臓病の疑いがある人は成人の5人に1人にのぼるとも言われています[2]。これは決して他人事ではなく、国民病とも呼べる状況です。

3. 今後のリスクを踏まえた治療を

CKDの分類が変わったことは、治療の考え方にも変化をもたらしました。

単に「腎臓の数値が悪い」ということだけでなく、「尿たんぱくがどれくらい出ているか(=腎臓へのダメージ)」「高血圧や糖尿病があるか(=血管へのダメージ)」を総合的に見て、今後起こりうるリスクを予測し、先回りして治療することが重要です。

腎機能低下の影響と治療

腎臓は、尿を作るだけでなく、血圧調整や造血、骨の管理など、生命維持に欠かせない多くの働きを担っています。

そのため、腎機能が悪くなると「尿が出ない」だけでなく、貧血や骨折、心臓病など、全身にさまざまな悪影響(ドミノ倒し)が及びます。

1. 腎機能低下が招く「全身のトラブル」

腎臓が働かなくなると、本来体の外に出すべき毒素が体内に溜まるほか、以下のような深刻な状態を引き起こす恐れがあります。

■体内に毒素が溜まる(尿毒症)

老廃物を尿として排泄できなくなり、食欲不振、吐き気、頭痛、意識障害などの症状が現れます。

■貧血になる(腎性貧血)

血液(赤血球)を作るホルモンが出なくなり、動悸・息切れ・立ちくらみなどが起こります。

■骨がもろくなる

カルシウムの吸収に必要なビタミンDを活性化できなくなり、骨粗鬆症や骨折のリスクが高まります。

■心臓病・脳卒中のリスク増大

「心腎連関」と言われるように、腎臓と心臓は密接に関係しています。腎臓が悪くなると、心筋梗塞や心不全、脳卒中で命を落とすリスクが急激に高まります。

2. 腎臓は「一度悪くなると治らない」

これが腎臓病の最も怖い点です。風邪や怪我とは異なり、慢性腎臓病(CKD)で失われた腎機能は、基本的に回復することがありません。

著しく機能が低下した場合(末期腎不全)、生きるためには「人工透析」や「腎移植」といった腎代替療法が必要になります。

だからこそ、機能が残っているうちに食い止める「早期発見・早期治療」が、あなたの未来を守る唯一の方法なのです。

3. 治療の2本柱(生活習慣・薬物療法)

慢性腎臓病の治療は、腎臓の機能を回復させることではなく、「今残っている機能を守り、透析までの期間を先延ばしにする(進行を遅らせる)」ことが最大の目的です。

■生活習慣の改善(食事・運動)

塩分・たんぱく質の調整や、適切なエネルギー管理、禁煙、適度な運動を行います。「制限」ばかりではなく、患者さまの生活に合わせた「調整」をご提案します。

■薬物療法(原因治療・合併症予防)

腎臓そのものの治療に加え、原因となる「高血圧」「糖尿病」「脂質異常症」のコントロールを行います。また、貧血やミネラル異常に対する薬も併用し、総合的に腎臓を守ります。

腎臓の健康を守るために、お気軽にご相談ください

CKD(慢性腎臓病)の治療には、ステージに応じた食事療法や、血圧・血糖などの総合的な管理が不可欠です。

以下のような方は、おひとりで悩まず、当院までご相談ください。

  • 健康診断の「検尿」で異常(たんぱく尿・血尿)を指摘された方
  • 尿の泡立ちや色が気になり始めた方
  • ご家族に腎臓病の方がいて、将来が心配な方

【腎臓チェッカー】あなたの腎臓は大丈夫?

腎臓の働きを調べるには、GFR(糸球体濾過量)という値を計算します。

GFRは性別、年齢、血清クレアチニン(Cr)値から計算することができます。

血清クレアチニン(Cr)値は健診や受診した際の採血で測定します。

下記の性別欄にチェック、Crと年齢の空欄にご自分の値を入力してみましょう。

 
Cr
年齢
GFR推算値
ml/min./1.73m2
GFR区分

たとえば、「男性、Cr値が0.8、年齢が55歳」という方の場合、上のチェックにこれらを入力して青いボタンを押すと、GFR推算値に78.4と表示されると思います。これは上の分類でいうと、「G2(60~89)で正常または軽度低下」に該当します。G2のうち、A1、A2、A3のどれに該当するのかは、その上に書いてある病気(糖尿病、高血圧、腎炎、多発性嚢胞腎、移植腎、不明、その他)のどれがあるか、たんぱく尿の度合いがどれくらいかによります。

記事執筆者

きむら内科小児科クリニック

院長 木村仁志

資格
  • 日本内科学会総合内科専門医
  • 日本腎臓学会腎臓専門医
  • 日本透析医学会透析専門医
  • なごや認知症安心安全プロジェクトもの忘れ相談医(登録かかりつけ医)
  • 日本ACLS協会 BLSヘルスケアプロバイダーコース修了(平成27年7月)
  • がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会修了(平成27年9月)
  • こどものみかた小児T&Aコース修了(平成27年10月)
  • かかりつけ医認知症対応力向上研修終了(平成28年11月)
  • かかりつけ医等心の健康対応力向上研修終了(平成28年11月)
所属学会
  • 日本内科学会
  • 日本腎臓学会
  • 日本透析医学会
  • 日本プライマリケア連合学会
  • 日本抗加齢医学会