血尿とは文字通り尿に血液(赤血球)が混じることを指します。尿を遠心分離してから、沈殿した部分を顕微鏡で確認する検査を尿沈渣法といいます。顕微鏡で見たときに、その覗いた一視野の中に赤血球が5個以上認められた場合に血尿と定義されます。
尿沈渣法は血尿の評価法としては最も確実ですが、少し手間がかかります。より簡便な方法として尿試験紙を用いた定性法(試験紙法)が、検診などでは広く用いられています。定性法は尿沈渣法で赤血球5個以上/1視野を要請と判断する感度で調整されています。一般的に定性法の程度は、−、±、1+、2+、3+に分けられ、+以上を陽性(潜血反応陽性)と診断します。試験紙法は簡便に検査できるので一次検査に用いられますが、偽陽性や偽陰性が出ることがあります。偽陽性というのは本当は陽性ではないのに陽性となってしまうことで、尿の中で細菌が増殖していた場合や激しい運動後などで、筋肉細胞が壊れて細胞内のミオグロビンという物質が血中に出現し、そのまま尿中に出てくると陽性となってしまうことがあります。また、偽陰性というのはその逆で、本当は陽性なのに陰性となってしまうことで、アスコルビン酸(ビタミンC)を摂取して尿中に多量に排泄されると陰性となってしまいます。したがって、検査前日の夜にアスコルビン酸を多く含む食品を摂取することは控えなければいけません。また採尿から分析までの時間がかかってしまうと潜血反応が低値化するため、冷所保存が望ましいとされています。
上記をふまえた上で、採尿の条件としては
といったところがあげられます。
尿に混じる赤血球の程度が多ければ目で見て明らかな血尿(肉眼的血尿といいます)となり、少なければ尿検査をして分かる程度の血尿(顕微鏡的血尿といいます)となります。お子さんの血尿は顕微鏡的血尿がほとんどで、主に3歳検尿や学校検尿で発見されます。肉眼的血尿の場合、上部尿路である腎臓からの出血では黒褐色や赤茶色の尿になり、膀胱など下部尿路からの出血は鮮紅色やピンク色になりやすいです。
風邪をひくたびに黒褐色や赤茶色の尿が一時的に認められるような時は慢性腎炎の可能性があるため、特に注意が必要です。
腎臓に加え尿路と呼ばれる尿の通り道のどの部位も血尿の原因となります。腎・尿路というのは具体的には腎臓、尿管、膀胱、尿道の4つです。しかしながら、血尿だけが陽性の場合、お子さんでは原因が確定できないことも少なくありません。
小児の血尿の原因として、頻度は低いのですが血液をろ過して尿を生成するフィルターの役目をしている糸球体と呼ばれる部分に炎症を起こす糸球体腎炎が最も問題となります。なぜなら、糸球体腎炎、特に慢性糸球体腎炎は早期発見し、早期治療介入することにより、腎臓機能の悪化を防ぐことが可能な疾患だからです。
しかし、腎炎であっても、尿の異常が血尿(顕微鏡的血尿)のみであれば、原則的に腎機能は悪化しないため、それ以上の精密検査(腎生検)や治療の必要性はありません。しかし、最初は血尿のみでも、蛋白尿が出現してくる場合は、診断と重症度評価のために腎臓の組織の一部を採取して詳しく調べる腎生検という検査が必要となります。それは、血尿と異なり蛋白尿が持続すると腎機能が障害されるためです。
したがって、定期的に尿検査を行い、血尿の増悪や蛋白尿の出現がないかどうかを確認することが大切です。間隔については最初は1か月ごと、所見に変わりがなければ3-4か月ごとに1年ほど経過観察。その後は半年から1年ごとに定期的にチェックすることをおすすめします。