帯状疱疹は、水痘・帯状疱疹ヘルペスウイルス(varicella-zoster virus:以後 VZV)による皮膚の病気です。ウイルスの名前のとおり、帯状疱疹は、水痘(すいとう)、いわゆる水ぼうそうと呼ばれる病気に関係しています。
VZVが初めて感染すると、水痘(すいとう)として、全身の皮膚に発疹をつくり”水ぶくれ”になります。この水ぶくれの中には、たくさんのVZVが含まれています。
水ぼうそうが治癒すると皮膚や血中のVZVは消失しますが、一部のVZVが脊髄から出る末梢神経の根元の部分に隠れて残ってしまいます。ただし、体の免疫力によって隠れ残ったVZVの活動は普段は抑えられています。
免疫力が低下すると、神経の根元に隠れているVZVが増殖し、その神経が分布している皮膚に水疱を伴う炎症を起こします。帯状疱疹とは、体に隠れているVZVが年齢やストレスなどで免疫力が低下したときに再び暴れだして(再活性化といいます)起こる皮膚炎です。神経の分布に沿って、発疹が帯のように出ることから帯状疱疹と呼ばれています。体の左右どちらか片側に出ることが特徴です。強い痛みを伴うことが多く、症状は2~4週間ほど続きます。多くは胸やお腹、背中、腕に症状が出ますが、顔や首などに現れることもあります。
帯状疱疹の皮膚症状が治った後も痛みが残ることがあります。これは「帯状疱疹後神経痛(たいじょうほうしんごしんけいつう)」と呼ばれ、電気が走る、焼けるような、刺すような、といった表現で患者さんが訴えられる激しい痛みです。感覚が鈍くなる状態や、触れるだけで痛みを感じる状態もよく見られます。
発疹が出た時の痛みが強い方は帯状疱疹後神経痛になる可能性が高く、何か月、ときには何年もつらい痛みが残ってしまう可能性があります。50歳以上では約2割の患者さんが、このような状態に移行するといわれています。これは再活性化した際に、神経が傷つくことにより痛みが残ってしまうためです。痛みの表れ方には個人差がありますが、中には痛みがつらくて生活できず、ペインクリニックという痛み専門のクリニックで定期的に痛みをブロックするような注射が必要になる方もいらっしゃいます。
帯状疱疹は薬で治療します。発疹に対しては、原因となっているウイルスであるVZVの増殖を防ぐ抗ウイルス薬を使用します。また、痛みの症状が強いため、痛み止めの薬剤も併せて使います。発疹がおさまってきたら、抗ウイルス薬はやめて、帯状疱疹後神経痛がある方には、その痛みにあった痛み止めの薬を使用します。
2016年、水痘ワクチンを「50歳以上の方の帯状疱疹の予防」を目的に接種することが認められました。50歳以上の方は帯状疱疹を予防する目的で、水痘ワクチンを接種できます。帯状疱疹は、発疹だけでなくその後の神経痛を含めると長期間痛みが続く可能性がある病気のため、できる限り発症しないように、予防することが重要です。予防としては免疫力を保つことも重要ですが、ワクチンも大切です。
水ぼうそうにかかったことがある方は、将来、帯状疱疹に苦しむ可能性があります。アメリカで行われた疫学調査では、水痘ワクチンを接種したところ、帯状疱疹の発症率や帯状疱疹後神経痛の発症率や重症化が抑えられることが報告されています。(上図)
水ぼうそうにかかったことのある50歳以上の方は、ワクチンの接種をお勧めします。
帯状疱疹と水ぼうそうは、どちらの疾患も「水痘・帯状疱疹ヘルペスウイルス(VZV)」 が原因です。
口内炎(単純ヘルペス)や陰部にできる”びらん”(性器ヘルペス)は、「単純ヘルペスウイルス」によって起こる病気です。ヘルペスと言う言葉が使われておりますが、水痘・帯状疱疹ヘルペスウィルスと単純ヘルペスウイルスは異なるウイルスです。