水痘(すいとう)とは
水痘(すいとう)は、いわゆる「水ぼうそう」のことで、「水痘帯状疱疹ウイルス」というウイルスに感染したことがない方が初めて感染することで起こる病気です。赤いブツブツから水ぶくれになり、うみが出てきます。ブツブツからかさぶたになるまでは7~10日程度かかります。
水痘にかかったお子さんは、唾液、鼻水、水ぶくれの中にウイルスがあり、空気感染、飛沫感染、接触感染で他へ感染します。感染してから症状が現れるまでの期間(感染の潜伏期間)は約2週間といわれています。また、発疹が出る2日前~発疹が出た10日後程度までの長い期間、ずっと感染力があります。感染力が強く、集団の保育など同じ空間にいるだけで水痘は感染していきます。
また、水痘は、症状が消えた後もウイルスが体から全て消える訳ではありません。残ったウイルスは、免疫力が落ちた時に再び発疹の症状をもたらします。この発疹は「帯状疱疹(たいじょうほうしん)」と呼ばれる病気です。水痘と帯状疱疹は同じウイルス(水痘帯状疱疹ウイルス)が原因で発症する病気なのです。
水痘にはワクチンがとても有効で、1回の接種で感染を80~85%減らし、重症化はほとんど100%予防できるといわれています。2014年に日本で定期接種になってから、5歳以下で水痘にかかる方が約8割も減っています。また、水痘にかかったことのある方で、体内に残ったウイルスによる帯状疱疹の対策として、50歳以上では帯状疱疹のワクチンを接種することができます。
接種時期
- 1歳以上、3歳未満で2回の接種を行います。
- 1回目の接種から3か月以上の間隔をあけて2回目の接種を行います。
- 標準的には6〜12か月の間隔です。
- 2014年10月から定期接種となりました。
もし接種せずに発症したら・・・
- 水痘に特徴的な皮疹が出現します。
- 紅斑から始まり(赤くなる)、丘疹(ブツブツがでる)、水泡(水ぶくれ)形成へと進み、膿疱(うみ)から痂皮(かさぶた)となり治癒します。
- 発熱を伴う場合もあります。
- 不顕性感染(感染しても症状がでないで経過すること)はほとんどありません。
- 合併症として、皮膚の細菌二次感染が時に起こります。
- 黄色ブドウ球菌や溶血性連鎖球菌が主な起因菌です。
- 急速に症状が進行・悪化する劇症型溶連菌感染症を合併することがまれにあり、この場合予後不良です。
- 中枢神経合併症として、髄膜脳炎や小脳失調があります。
【注意】このような方は特に注意が必要です!
- 白血病、悪性腫瘍患者の方
- 臓器移植後の方
- ステロイド薬や免疫抑制薬の治療中の方
- HIV陽性者、AIDS患者の方
- 放射線治療を受けている方
- 先天性免疫不全症の方
- 著明な栄養障害の方
- 妊婦(とくに妊娠末期28週0日以降の方)
- 生後5〜10日目の新生児に発症
上記の方は、基礎疾患や治療薬の影響により免疫低下状態にある可能性があり、
水痘に感染すると重症化する可能性が高いことが知られています。
ひとくちメモ
- 妊娠20週以前の妊婦が水痘に罹患すると、数%の頻度で胎児に先天性水痘症候群(congenital varicella syndrome:CVS)を発症するリスクがあります。
- 接種後は90%以上で抗体陽性になります。ただし、接種済みの方の罹患も認められます。
- ワクチン接種後罹患の場合は、水痘を発症しても軽症となる場合が多く、発疹数が少ない、水泡を形成しない、発熱を伴わない、短時間で治癒するなどがみられます。
- 水痘に免疫のない方が、水痘あるいは帯状疱疹患者と接触した場合、72時間以内に水痘ワクチンを緊急接種すれば、発症の阻止あるいは軽症化が期待できます。
- すなわち、感染源に暴露した後の予防手段として、ワクチンを用いる場合があります。
記事執筆者
きむら内科小児科クリニック
院長 木村仁志
資格
- 日本内科学会総合内科専門医
- 日本腎臓学会腎臓専門医
- 日本透析医学会透析専門医
- なごや認知症安心安全プロジェクトもの忘れ相談医(登録かかりつけ医)
- 日本ACLS協会 BLSヘルスケアプロバイダーコース修了(平成27年7月)
- がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会修了(平成27年9月)
- こどものみかた小児T&Aコース修了(平成27年10月)
- かかりつけ医認知症対応力向上研修終了(平成28年11月)
- かかりつけ医等心の健康対応力向上研修終了(平成28年11月)
所属学会
- 日本内科学会
- 日本腎臓学会
- 日本透析医学会
- 日本プライマリケア連合学会
- 日本抗加齢医学会