予防接種法で決められた病気に対する予防接種が「定期接種」です。接種対象や接種回数が、法律で決められています。接種費用の全部あるいは一部が、自治体による公費負担でまかなわれます。
対象の病気はジフテリア、百日ぜき、急性灰白髄炎(ポリオ)、麻疹(はしか)、風疹、日本脳炎、破傷風、結核、Hib感染症、ロタウィルス、小児の肺炎球菌感染症、ヒトパピローマウィルス感染症(子宮頸がん予防)、水痘(みずぼうそう)、高齢者のインフルエンザ、高齢者の肺炎球菌感染症、新型コロナウイルス感染症があります。
予防接種法で決められた病気以外の予防接種は「任意接種」とよばれます。自治体が接種費用の一部を助成している場合もありますが、原則として自己負担で接種します。
「任意接種」というと、”打ちたい人だけが打つワクチン”と考えられがちですが、病気を予防するためには定期接種と同じくらいに大切なワクチンです。
おたふくかぜ、A型肝炎などが、現状では任意接種のワクチンです。
定期接種のワクチンであっても、予防接種法で決められた対象年齢以外の方に接種する場合は、任意接種の扱いになります。
生ワクチンは、生きたウィルスや細菌の病原性を弱めて製造されます。生ワクチンの接種により、成分である弱毒ウィルスや細菌が体内で増殖するため、接種後一定の期間を経て、その病原体による症状が軽く出てくることがあります。
生ワクチンには、MRワクチン(麻疹風疹ワクチン)、BCG、水痘、おたふくかぜ、ロタウィルスなどがあります。
不活化ワクチンとは、ホルマリンなどで処理をして毒力や感染力をなくした病原体やその成分で作ったものです。
生ワクチンのように体内で増殖しません。ほとんどの不活化ワクチンは、1回接種しただけでは必要な免疫を獲得・維持できず、通常は数回以上の接種が必要です。
DPT-IPV(ジフテリア・百日咳・不活化ポリオ混合)、日本脳炎、 Hib(インフルエンザ菌b型)、インフルエンザなどが不活化ワクチンに分類されます。
新型コロナウイルスに対しては、2020年から世界で様々な種類のワクチンが開発されてきました。2023年7月現在、日本で薬事承認され使用されてきたワクチンは次の3種類です。
これらは全て、新型コロナウイルス感染症を予防するためのワクチンですが、ワクチンの種類が異なります。
ファイザー社のコミナティとモデルナ・ジャパン社のスパイクバックは、「mRNAワクチン」です。mRNAは”遺伝子の設計図”といわれています。mRNAを体内に入れることで、その設計図をもとに、ウイルスと同じ形状のタンパク質が作られます。これにより、新型コロナウイルスに対し防御反応する抗体が体内で作られ、ウイルスが体内に入ってきたときには、抗体が働きウイルスが体の中で増殖するのを防ぎます。
武田社(ノババックス)のヌバキソビッドは、組換えタンパクワクチンです。新型コロナウイルスの表面にあるスパイクタンパク質によく似たタンパク質を、ナノ粒子化してワクチンの成分とする技術が用いられています。組換えタンパクワクチンの技術は、B型肝炎ウイルスワクチンなど、他のウイルスのワクチンでも使われています。
アストラゼネカ社のバキスゼブリアは、ウイルスベクターワクチンです。アデノウイルスという別のウイルスに、新型コロナウイルスの表面にあるスパイクタンパク質の遺伝子情報が組み込まれているものが入っています。細胞内で自己複製できないように加工されていますので、接種者の体内でこのウイルスが増殖することはありません。他のワクチン同様に、ワクチンを接種することで新型コロナウイルスのスパイクタンパク質に対する抗体が作られます。