四種混合(DPT-IPV)ワクチンとは
四種混合(DPT-IPV)ワクチンは、ジフテリア、百日咳、破傷風、ポリオの発症を予防するワクチンです。従来の三種混合ワクチン(ジフテリア・百日咳・破傷風)にポリオワクチンを加えたワクチンで、ポリオについては不活化ワクチン(ウイルスを殺して毒性をなくし、その成分を取り出してワクチン化したもの)になります。
追加分まで接種すれば100%の確率で免疫を獲得できるとされています。ただし、最後に接種してから10年程度経過すると、ジフテリア・百日咳・破傷風の発症予防効果は弱まりますので、追加接種(DPTワクチン、DTワクチン、破傷風トキソイドなど)を実施することが望ましいとされています。また、ポリオの発症予防効果は、数年で落ちる可能性があるため、就学前(4~6歳)に不活化ポリオワクチンの追加接種が厚生労働省で検討されています。
接種時期
- 生後2か月以上90か月未満が接種対象です。
- 百日咳は乳児早期に重症化しやすく、病気にかかる前に予防するためには、生後2か月になったら出来るだけ早く接種することが大切です。
- ポリオ流行時は年少児に患者が多発します。生後2か月になったらできるだけ早く接種しましょう。
- 接種を忘れた場合、接種対象月齢範囲内であれば、気づいた時点での接種が勧められます。
推奨される接種スケジュール
第1期
①第1期初回免疫
初回免疫は3週以上の間隔で3回接種。
生後2ヶ月以上12ヶ月未満が標準的な接種期間
②第1期追加免疫
初回免疫の3回目終了後、12〜18か月経過した時点で1回接種するのが標準
ただし、初回免疫終了後6ヶ月以上の間隔をあければ接種は可
第2期
11~12歳の間に、2種混合ワクチンを1回接種
もし接種せずに発症したら・・・
これまでに何らかの理由でDPTワクチンの接種率が低下した時には、病気の流行が認められています。1975年にも副反応への懸念からDPT接種が一時中断されましたが、その後百日咳患者さんが増加しました。
ポリオは国内では長らく患者発生はありませんが、海外では現在でも流行している国があり、ワクチンを接種して免疫をつけておくことが大切です。ポリオに対しては有効な治療法は存在しません。しかし、ワクチンによる予防は極めて有効です。
ジフテリア
- ジフテリア菌という細菌によって発生する病気です。
- 咽頭や喉頭とよばれる喉のあたりに症状が出現します。発熱、咳、嗄声(声がかすれること)、嚥下障害(飲み込みにくくなること)、呼吸困難がみられます。
- 心筋障害による突然死や末梢神経障害による麻痺が合併症として知られています。
百日咳
- 百日咳菌という細菌によって発生する病気です。
- 乳幼児では、激しい発作性の咳と咳発作後の笛が鳴るような吸気(whoop)が特徴的症状です。
- 生後6ヶ月未満でワクチン未接種の児では、重症化のリスクが高く、無呼吸発作や脳症を合併し生命にかかわることがあります。
- 年長児や成人では、ひどい咳のこともありますが、軽い症状のみで百日咳と診断されずに放置され、他人への感染源となる場合があります。
破傷風
- 破傷風菌という細菌によって発生する病気です。破傷風菌は世界中の土壌や動物の糞便中に広く存在し、いつでもどこでも感染の機会があります。
- 主症状は筋肉のけいれんで、多くは咀嚼筋(噛む筋肉)のけいれんによる開口障害で始まります。
- その後、けいれんは全身へ波及します。
- 呼吸困難や嚥下障害から肺炎を併発したり、死に至ることもあります。
ポリオ
- ポリオウイルスというウイルスによって発生する病気です。麻痺を起こします。
- 脊髄や脳など中枢神経の運動神経細胞がポリオウィルスによって傷害され、四肢の麻痺が最も多い症状です。
- また、呼吸不全や肺炎で死亡することもあります。
- いったん起こった麻痺は回復しない場合がほとんどで、著名な筋萎縮とも相まって後遺症につながります。
記事執筆者
きむら内科小児科クリニック
院長 木村仁志
資格
- 日本内科学会総合内科専門医
- 日本腎臓学会腎臓専門医
- 日本透析医学会透析専門医
- なごや認知症安心安全プロジェクトもの忘れ相談医(登録かかりつけ医)
- 日本ACLS協会 BLSヘルスケアプロバイダーコース修了(平成27年7月)
- がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会修了(平成27年9月)
- こどものみかた小児T&Aコース修了(平成27年10月)
- かかりつけ医認知症対応力向上研修終了(平成28年11月)
- かかりつけ医等心の健康対応力向上研修終了(平成28年11月)
所属学会
- 日本内科学会
- 日本腎臓学会
- 日本透析医学会
- 日本プライマリケア連合学会
- 日本抗加齢医学会