高血圧を知るにあたり、血圧の意味や仕組みを少し解説します。
心臓から送り出された血液が血管の壁を押す力のことを「血圧」と呼びます。血圧は、心臓が血液を押し出す力、血管の拡張の具合、血管の弾力性、腎臓、神経など様々な要素が影響します。また、血圧は常に変動していて、朝起きた時から午前中にかけて高く、夕方から夜にかけて低くなります。外気の温度とも関係があり、季節としては一般的に夏よりも冬の方が高くなります。
血液を全身に送るため、常に心臓は収縮と弛緩(しかん:ゆるむこと)を繰り返しています。
血圧のことを「上の血圧・下の血圧」と呼ぶことがありますが、上の血圧とは心臓が収縮して血液を全身に送り出したときの「収縮期血圧(最高血圧)」のことで、下の血圧とは心臓が弛緩している時の「拡張期血圧(最低血圧)」を意味しています。
血圧は常に変動していますのでちょっとしたことですぐに上がったり下がったりします。測った時にたまたま血圧が高い場合、高血圧症とは言い切れません。くり返して測っても血圧が正常より高い場合を高血圧といいます。
また、緊張している時は上がりやすく、病院の診察室や健康診断で血圧をはかると、家ではかるよりも高くなりやすい傾向にあります。そのため、高血圧の基準も診察室と家庭では異なります。
日本高血圧学会では、診察室ではかった場合は、収縮期血圧(上の血圧)140mmHg以上または拡張期血圧(下の血圧)90mmHg以上を「高血圧(症)」と定義しています。自宅ではかった場合は、収縮期血圧135mmHg以上または拡張期血圧85mmHg以上が高血圧です。
「NIPPON DATA 2010」の調査 (*1 )によると、日本の高血圧有病者数は約4,300万人にも上ると推計されており、男女比をみると女性が多く、女性の通院理由の第一位です。
(*1)(参考)本邦の高血圧有病者推計数 (性・年齢階級別) |NIPPON DATA2010および2010年国勢調査人口より推計
「高血圧」であっても、基本的に自覚症状はありません。しかし、高血圧は動脈硬化の原因となり、動脈硬化が進行することで脳梗塞(のうこうそく)や心筋梗塞(しんきんこうそく)、狭心症(きょうしんしょう)、腎臓病など命にかかわる危険な合併症を招く恐れがあるため、「早期発見・早期治療」が重要となる病気です。早朝の頭痛、夜の頻尿や呼吸困難、めまい、ふらつき、足の冷えといった症状がある場合、高血圧による他の臓器への影響(合併症)の可能性があります。
高血圧は遺伝素因や乱れた食生活・過度な飲酒・運動不足・ストレスなどの生活習慣が主な発症要因となりますが、腎臓や内分泌の病気が原因となり引き起こされることもあります。
高血圧の状態は、大きく分けて2つあります。
1つは、血管が何らかの理由で収縮したり硬く細くなることです。血管がこのような状態になると血圧が上がります。食生活や過度な飲酒、運動不足、ストレスなどの生活習慣によってこのような状態となります。
もう1つは血液の量です。体内の血液の量が多ければ、血管の壁に強い圧力がかかり高血圧となります。腎臓や内分泌の病気が原因となって高血圧が引き起こされる場合は、この状態になっていることが多いと考えられています。
高血圧の治療
高血圧は生活習慣病ですので、食事療法・運動療法など「生活習慣の改善」を治療の基本となります。ただし、合併症の発症リスクが高い場合など、必要に応じて「薬物治療」を併用します。
また、高血圧の治療では、血圧をはかること自体がとても重要になります。同じ高血圧という診断でも、睡眠中に血圧があまり低下せず早朝まで高い「高血圧持続型」と、起きる時間帯にかけて血圧が高くなる「早朝昇圧(モーニングサージ)型」という2つのタイプがあります。1日の血圧をおおよその動きを把握することで、それにあった適切な薬の種類や飲むタイミングをかんがえ、効果的な治療が期待できるのです。
健康診断で高血圧を指摘された方、ご自身の血圧が気になり始めた方、ご家族に高血圧の方がいて心配な方など、お気軽に当院までご相談ください。