高尿酸血症は、名前の通り尿酸値が高い状態にある病気です。高いこと自体は問題ではありませんが、 その状態が続くと「痛風」をはじめとしていろいろな合併症を引き起こすことが分かっています。実は、日本で初めて痛風患者が報告されたのはおよそ100年前のことです。明治時代に来日したドイツのベルツ博士が「日本にはほとんど痛風はない」と書き残したように、もともと痛風は日本人には無縁の病気でした。日本で痛風患者が急増したのは戦後の昭和30年代後半からです。それまでのご飯、味噌汁、焼き魚、漬物といった低脂肪、低蛋白、低カロリーの和食メニューから、ステーキ、ハンバーグ、ファーストフードなどの、高脂肪、高タンパク、高カロリーな洋食に食事スタイルが変化したことにより、痛風の患者が増加しました。
みなさん、「痛風」という言葉を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。ある日突然、足の親指の付け根が真っ赤に腫れて、激痛が走ります。いわゆる「痛風発作」です。ちなみに当院の車イスを初めて使用された患者さんは30代男性の痛風患者さんでした。痛みで地面に足をつくこともできないということで、駐車場から車イスでいらっしゃいました。
一方で、この痛みは長くは続きません。7~10日すると自然に軽くなり症状がなくなります。そして、治療しないとやがて再発します。これをくり返すうちに、段々と慢性的に痛みが続くようになります。こうなると、痛風の原因である「尿酸結晶」が関節内や関節周囲の皮膚の下にたまりかたまりとなります。このかたまりは、手の指やひじ、かかと、アキレス腱などにできますので、その関節が動かしづらくなります。
厚生労働省が定期的に実施している国民生活基礎調査によると、痛風で通院している患者さんの数は、平成10年度では59万人と平成元年からは約2倍に増加しているそうです。さらに、「痛風予備軍」といわれる「高尿酸血症」の人は600万人くらいいると推測されています。我々が病院で診察する痛風患者さんは氷山の一角でしかないということです。
高尿酸血症かどうかは、血液検査の「尿酸値(UA;Urea Acid)」という値で決まります。正常値は成人で7.0mg/dl以下とされており、これ以上になると高尿酸血症といいます。
また、痛風は、高尿酸血症が持続することで、結果として関節の中に尿酸による結晶が生じ、それが炎症を起こした状態を指します。痛風の診断基準は、血液検査の尿酸値以外に、尿酸による結晶があることや、炎症の既往が2回以上あること、24時間以内に炎症がピークに達すること、炎症が片側の足であることなどがあります。高尿酸血症と痛風はイコールではなく、高尿酸血症がずっと続いた結果起こる症状が痛風です。
痛風というと、中高年の男性の病気とイメージする方も多いのではないでしょうか。痛風患者は圧倒的に男性が多く、患者全体の99%を占めています。女性ホルモンに尿酸を排泄する作用があるために女性の尿酸値は男性に比べて低くなるわけです。しかし、女性でも腎機能が低下した方や尿酸値が上がるような薬を内服している方、閉経後の方などは尿酸値が上がりやすくなるので、注意しましょう。厚生労働省の調査によれば、痛風の最近の特徴として20~30歳代の若年層で増加し、それが全体の痛風患者の増加を押し上げている背景にあるといいます。
痛風は、関節炎や痛風結節、尿路結石といった、痛風がダイレクトに関係する病気が現れます。しかし、それだけではありません。肥満、高血圧、脂質異常症、糖尿病などの病気を合併し、これが心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患などにつながるリスクになるといわれています。痛風は、足が一時的に痛むだけではないのです。