DIABETES_THERAPEUTIC
糖尿病治療薬について

糖尿病の治療では、まず食事療法と運動療法を実施しますが、これらを2~3か月実施しても血糖値に良い結果が得られない場合は、薬によって血糖値を下げる薬物療法を実施します。薬物療法で使用する糖尿病の治療薬は、2023年7月現在では10種類ありますが、これらは体にどのように作用するかによって、4つにタイプに分けられます。

インスリンの作用を良くする内服薬(インスリン抵抗性改善薬)

ビグアナイド薬:

メトグルコ®、グリコラン®など

肝臓から糖の放出を抑える、インスリンに対して感受性を高めるといった作用で、血糖値を下げます。主な副作用として、食欲がなくなる、吐き気、便秘、下痢などがあります。また、高度な心臓・肝臓・腎機能の低下がある方は使用できず、高齢者では脱水に注意が必要です。

チアゾリジン薬:

アクトス®など

インスリンに対して感受性を高める作用で血糖値を下げます。脂質改善作用もあります。ただし、体重増加を起こす場合があります。また、主な副作用として、むくみや急激な体重増加などがあります。心不全の方、高度な肝・腎機能障害がある場合には投与できません。

糖の吸収と排泄を調節する内服薬

α-グルコシダーゼ阻害薬:

セイブル®、ベイスン®、グルコバイ®など

小腸からの糖分の消化・吸収を遅らせて食後の高血糖を抑えます。ほかの薬との併用が適していると考えられています。主な副作用として、胃腸障害、おならの増加、お腹の張り、下痢があります。

SGLT2阻害薬:

フォシーガ®、ジャディアンス®、スーグラ®、ルセフィ®、デベルザ®、カナグル®など

尿の中に糖を出して血糖を下げます。比較的新しい薬で、心血管疾患を抑えることができるという研究結果もあり、近年はSGLT2阻害薬が処方される割合が増えています。糖尿病だけでなく慢性腎臓病や慢性心不全の患者さんにも使えるようになりました。ただし、高齢者、腎臓機能の低下がある方、利尿剤を使用している方は、脱水や血栓・塞栓症などに注意が必要です。主な副作用として低血糖、尿路・性器感染、脱水、頻尿、皮膚症状などがあります。

インスリンの分泌を増やす内服薬(インスリン分泌促進薬)

スルホニル尿素(SU)薬:

アマリール®、グリミクロン®、オイグルコン®、ダオニール®など

膵臓にあるβ細胞という細胞を刺激して、インスリンの分泌を促進することで血糖値を下げます。

主な副作用として低血糖や体重増加があります。低血糖を起こしやすいため、高齢者では注意が必要な薬です。また、高度な肝・腎機能障害がある方、1型糖尿病の方は使用できません。

DPP-4阻害薬:

エクア®、ジャヌビア®、グラクティブ®、ネシーナ®、トラゼンタ®、テネリア®、スイニー®、オングリザ®、ザファテック®、マリゼブ®など

膵臓にあるインクレチンというホルモンは、血糖値が高いときにインスリンの分泌を促進し、血糖値を上げるホルモンが分泌されるのを抑制し、血糖を下げます。DPP-4阻害薬は、インクレチンが分解してしまうのを抑えてインクレチンの作用を助けます。体重が増えにくいというメリットもありますが、主な副作用として低血糖や便秘があり、SU薬やインスリン製剤と併用する場合は特に低血糖に注意が必要です。

速効型インスリン分泌促進薬(グリニド薬):

シュアポスト®、スターシス®、ファスティック®、グルファスト®など

インスリン分泌を促進し、血糖値を下げます。食後高血糖がみられる患者さんに適した薬といわれています。主な副作用として低血糖があります。食直前(食事をする直前5~10分前)での服用となります。食後では十分な効果が得られず、食事30分前の服用では低血糖リスクが高くなるので注意が必要です。

GLP-1受容体作動薬:

ビクトーザ皮下注®、ビデュリオン皮下注®、バイエッタ皮下注®、リキスミア皮下注®、オゼンピック皮下注®、トルリシティ皮下注®

膵臓にあるβ細胞の「GLP-1受容体」という部分に結合して血糖値が高いときにインスリンの分泌を促し、血糖値を上げるグルカゴンというホルモンの分泌も抑制することで、血糖を下げます。空腹時や食後高血糖の改善に効果的な注射薬です。主な副作用として、吐き気、便秘、下痢などがあります。

イメグリミン:

ツイミーグ🄬

2021年に発売された完全に新しいタイプの薬です。ミトコンドリアをターゲットとして、インスリンの分泌を促進するとともに、糖の代謝を改善します。主な副作用として、下痢、便秘、低血糖などがあります。※SU薬に加えてイメグリミンを飲む場合は低血糖に特に注意が必要です。

インスリンを体外から補う注射薬(インスリン製薬)

インスリン注射

ノボラピッド®、ヒューマログ®、アピドラ®、ノボリン®、ヒューマリン®、トレシーバ®、レベミル®、ランタス®など

インスリン自体を体に補います。血液中の作用のスピードや持続力により、超速効型、速効型、中間型、持続型、混合型、配合溶解の6つのタイプがあり、血糖の状態や進行具合によって使い分けます。自分自身でインスリン分泌がほとんどなく、生きていくためにインスリンの補充が必須となる方はインスリン注射が必須です。

糖尿病治療の薬物療法に用いる経口薬や注射薬は、少量から始めて血糖コントロールの状態をみながら徐々に増量します。体重減少や生活習慣の改善による血糖コントロールの改善に伴って糖毒性が解除され、薬剤の減量や中止の可能性もあります。

記事執筆者

きむら内科小児科クリニック

院長 木村仁志

資格
  • 日本内科学会総合内科専門医
  • 日本腎臓学会腎臓専門医
  • 日本透析医学会透析専門医
  • なごや認知症安心安全プロジェクトもの忘れ相談医(登録かかりつけ医)
  • 日本ACLS協会 BLSヘルスケアプロバイダーコース修了(平成27年7月)
  • がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会修了(平成27年9月)
  • こどものみかた小児T&Aコース修了(平成27年10月)
  • かかりつけ医認知症対応力向上研修終了(平成28年11月)
  • かかりつけ医等心の健康対応力向上研修終了(平成28年11月)
所属学会
  • 日本内科学会
  • 日本腎臓学会
  • 日本透析医学会
  • 日本プライマリケア連合学会
  • 日本抗加齢医学会