DIABETES-SICKDAY
シックデイ時の過ごし方

シックデイとは

シックデイとは英語で「sick day」、直訳すると「病気の日」ということで、糖尿病患者さんが別の病気にかかり、血糖コントロールが不安定になってしまうことを意味します。原因となる病気で多いのは風邪や胃腸炎など日常的な病気ですが、大きなケガや精神的なストレスなど強いストレスを感じることでもストレスホルモンの分泌が促進されるため、血糖値が上昇して血糖コントロールが不十分になります。また、逆に病気によって食欲が低下したときに血糖を下げる薬や注射薬をいつも通り投与すると、低血糖を起こす危険があります。

シックデイはいつ起こるかわかりません。そのため、普段からかかりつけ医とシックデイの時の薬・食事などの扱い(シックデイルール)について相談・確認しておくとよいでしょう。

日常生活での注意点

シックデイのときは、体力低下を起こさないように「安静と保温」が大切です。

また、脱水やケトーシス *6 の発症を抑えるために、十分な水分(約2リットル/日)と糖質(約100g~200g)を摂取するように心がけましょう。ただし、糖質の濃度の高い飲み物は、高血糖を助長しますので、飲みすぎには要注意です。

*6 ケトーシス:ケトン体が血中に増加した状態で、糖尿病の場合にはインスリン不足によって血液中のブドウ糖代謝ができなくなること。吐き気や嘔吐・腹痛など消化器症状が現れる。ケトン体がさらに増えると「糖尿病ケトアシドーシス」に進行して意識障害・昏睡など危険な状態となることもある。

医療機関への受診タイミング

シックデイの原因となる疾患で現れている症状(発熱・嘔吐・下痢・痛みなど)が強いとき、食事摂取が困難なとき、脱水症状(ツルゴール低下 *7 、尿量減少など)が強いときなどは、医療機関の受診をおすすめします。

*7 ツルゴール反応:皮膚の張りを診ること。皮膚をつまんで元に戻る時間を測る触診で、脱水状態の評価となる。元に戻るまで2秒以上かかる場合には、脱水を疑う。

また、血糖自己測定(self-monitoring of blood glucose:SMBG)を行っている患者さんでは、血糖値350mg/dl以上が続く場合には、速やかに医療機関を受診しましょう。

服用薬の調整

シックデイルールは、急性合併症の発症予防になります。また、災害発生時にも活用できますので、全ての糖尿病患者さん及びそのご家族の方は、事前に主治医と相談しておくことが望ましいです。

●1型糖尿病の方

食事が摂れなくても、基礎インスリンの継続が重要です。

基礎インスリンの中断は、糖尿病ケトアシドーシスの原因となります。

追加インスリンに関しては、食事摂取量(特に糖質の摂取量)に応じて投与します。SMBG(血糖自己測定)はできるだけ小まめに行い、食前血糖値が250mg/dl以上となったら補正インスリンの投与が必要です。

●2型糖尿病の方

使用している血糖降下薬によって、調整の仕方が異なります。

基本的な考え方は次の通りです。

(※糖尿病の治療薬は、様々な薬の中でも特に扱いに注意が必要なので、ハイリスク薬と呼ばれています。食事が摂れないからといって自己判断で服用したり中止したりすると急激な高血糖や低血糖になり危険です。実際の調整の仕方については、主治医と確認しておきましょう)

     

-インスリン療法

1型糖尿病薬と同じように基礎インスリンは継続、追加インスリンは食事の摂取量に応じて投与する。

-GLP-1受容体作動薬

食事が摂取できないとき・消化器症状があるときには、休薬する。

-ピグアナイド薬

脱水症の懸念があるときは、乳酸アシドーシスの発症リスクが高くなるので禁忌(飲むのはNG)。

-チアゾリジン薬

休薬する(シックデイ中の休薬OK)。

-スルホニル尿素(SU)薬・即効型インスリン分泌促進薬(グリニド薬)

食事摂取量に合わせて調整する必要があるので、事前に主治医と確認しておきましょう。

-DPP-4阻害薬 

食事がとれない間は休薬。

-α-グルコシダーゼ阻害薬

消化器症状がある場合は休薬。

-SGLT2阻害薬

浸透圧利尿に伴う脱水を起こしやすいので休薬。

記事執筆者

きむら内科小児科クリニック

院長 木村仁志

資格
  • 日本内科学会総合内科専門医
  • 日本腎臓学会腎臓専門医
  • 日本透析医学会透析専門医
  • なごや認知症安心安全プロジェクトもの忘れ相談医(登録かかりつけ医)
  • 日本ACLS協会 BLSヘルスケアプロバイダーコース修了(平成27年7月)
  • がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会修了(平成27年9月)
  • こどものみかた小児T&Aコース修了(平成27年10月)
  • かかりつけ医認知症対応力向上研修終了(平成28年11月)
  • かかりつけ医等心の健康対応力向上研修終了(平成28年11月)
所属学会
  • 日本内科学会
  • 日本腎臓学会
  • 日本透析医学会
  • 日本プライマリケア連合学会
  • 日本抗加齢医学会