脂質異常症とは
脂質異常症は、血液中の脂質(中性脂肪やコレステロールなど)の代謝バランスが乱れて
異常が起こる病気であり、生活習慣病のひとつです。
厚生労働省の調査(2017年) *1 では、脂質異常症で継続的に治療を受けている総患者数は
推定約220万人に上り、男女比をみると女性は男性の2.4倍多いと報告しています。
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コレステロール(脂質)とは?

通常、血液中の脂質(血中脂質)は、肝臓によって一定の量に調整されています。
しかし、何らかの理由で血液中の脂質バランスが崩れると、血管の壁にコレステロールが
溜まるようになり、血管の内腔(内側の空間)が狭くなってしまう「脂質異常症」となり
ます。
コレステロールの働き
「コレステロール=体に良くないもの」というイメージがあるかもしれませんが、それは
「摂りすぎ」での話であり、実はコレステロールは「生命維持のために必要な成分」のひ
とつなのです。
1 細胞膜の構成成分

コレステロールは、細胞膜の構成成分として存在しています。細胞膜とは、細胞内に
ウイルスなどの有害物質が進入してくるのを防いだり、逆に細胞内の物質が細胞外に
出てしまうのを防いだりする役割をしています。
コレステロール不足は細胞膜を弱め、免疫力の低下につながることから、強い細胞膜
にするにはコレステロールの存在が必要不可欠となります。
2 ホルモンの原料
コレステロールは、性ホルモン(性機能)や副腎皮質ホルモン(炎症抑制・たんぱく質
代謝・糖質代謝など)の原料となっています。
副腎皮質ホルモンが不足すると、疲れやすくなったり食欲低下を招いたりします。
3 胆汁酸(たんじゅうさん)の原料
コレステロールは、肝臓で脂肪の消化・吸収に関与する「胆汁酸」の原料となります
。
コレステロールから合成される「胆汁酸」は脂肪の吸収を促進させた後、腸内から再吸
収されて肝臓に戻ってきます(腸肝循環)。そして、再び胆汁酸として、脂肪の吸収を
助けます。
コレステロールはほぼ循環して働いているため、コレステロールを多量に摂取する必
要はなく、摂取しすぎると使い切れずに余る=血中のコレステロール濃度が上がって
しまうことになります。
脂質の種類

脂質とは、コレステロールや中性脂肪などの脂肪分が含まれます。
また、コレステロールには、HDLコレステロール(善玉コレステロール)とLDLコレステロ
ール(悪玉コレステロール)の2種類があります。
なお、以前は「善玉コレステロール」「悪玉コレステロール」を区別せずに、総コレステ
ロール値が高すぎる(220mg/dL~)と「高コレステロール血症」と呼ばれ、治療の対象と
されてきましたが、逆に善玉コレステロール値が低すぎでも動脈硬化の原因となること(
低HDLコレステロール血症)が分かり、その名称では正しい病態を表していないというこ
とで現在は「脂質異常症」に変更されています。
善玉コレステロール
HDLコレステロールは、LDLコレステロールによって全身の血管・組織に運ばれたコレ
ステロールのうち、余ってしまったコレステロールを回収して、肝臓に持ち帰る働きを
しています。血液中の不要なコレステロールの言わば「掃除係」として働いていること
によって、動脈硬化を防ぐため「善玉コレステロール」と呼ばれています。

悪玉コレステロール
LDLコレステロールは、肝臓から全身の血管・組織にコレステロールを運ぶ働きをして
います。しかし、コレステロールを過剰摂取して血液中のコレステロール値が高くなる
と、血管壁にコレステロールが溜まるようになるため、動脈硬化を引き起こす原因にな
ります。それ故に「悪玉コレステロール」と呼ばれています。
このLDLコレステロール値が高いと、心筋梗塞や脳卒中発症リスクが高まるため、現在
はLDLコレステロール値の管理を最重視するようになっています。
とはいえ、本来この悪玉コレステロールの働きも生命維持に欠かせないため、血液中の
コレステロール値が正常であれば、悪玉コレステロールも問題となりません。

中性脂肪
体が活動するためのエネルギー源(ブドウ糖不足の補助)、皮下脂肪として体温保持の
働きをしています。
必要以上に皮下脂肪が溜まると「肥満」となり、肝臓に溜まると「脂肪肝」として肝臓
の働きが悪くなるなど、生活習慣病リスクも高まります。
このように、コレステロール・中性脂肪のどちらも体にとって無くてはならない働きをし
ていますが、一方で増えすぎると動脈硬化の原因となります。
こちらのページもご覧ください
脂質異常症の定義・診断
脂質異常症セルフチェック
脂質異常症の原因と症状
脂質異常症の検査
脂質異常症の治療
脂質異常症の通院頻度と費用
よくあるご質問
院長から一言
文責
腎臓専門医
総合内科専門医 木村 仁志