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脂質異常症とは?原因・種類・リスクを詳しく解説

脂質異常症とは

脂質異常症は、血液中の脂質(コレステロールや中性脂肪)の代謝バランスが崩れ、異常値を示す病気です。自覚症状がないまま進行することが多く、放置すると動脈硬化が進み、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞など命に関わる疾患のリスクが高まります

厚生労働省が3年ごとに実施している「患者調査」の令和5年(2023)調査によると、脂質異常症で治療を受けている総患者数(継続的な治療を受けていると推測される患者数)は、458万7,000人(男性152万7,000人、女性306万1,000人)となっています。前回(令和2年)調査〔401万人(男性124万9,000人、女性276万2,000人)〕より、57万7,000人増加しました。
(出典:厚生労働省公式HP|令和5年(2023年) 患者調査の概況

コレステロールの役割

コレステロールは「体に悪い」というイメージがありますが、実際には細胞膜やホルモン、胆汁酸の原料として重要な働きをしています。

  • 細胞膜の構成成分:ウイルスや有害物質の侵入を防ぎ、細胞の機能を保つ。
  • ホルモンの原料:性ホルモンや副腎皮質ホルモンを作る。
  • 胆汁酸の原料:脂肪の消化・吸収を助ける。

ただし、過剰に摂取すると血管に蓄積し、動脈硬化を引き起こすため、バランスが重要です。

HDL(善玉)コレステロールとLDL(悪玉)コレステロール

HDL(善玉)コレステロール

HDLコレステロールは、血管内に余分に蓄積されたコレステロールを回収し、肝臓へ運ぶ働きを持ちます。これにより、動脈硬化の進行を防ぐため「善玉コレステロール」と呼ばれます。

HDL(善玉)コレステロール

LDL(悪玉)コレステロール

LDLコレステロールは、肝臓から全身の組織へコレステロールを運ぶ役割を担います。しかし、血中のLDLコレステロール値が高くなりすぎると、血管壁に蓄積し、動脈硬化を引き起こします。そのため「悪玉コレステロール」と呼ばれます。

LDL(悪玉)コレステロール

LDLコレステロール値が高いと心筋梗塞や脳卒中のリスクが上がるため、現在ではLDLコレステロールの管理が重要視されています。

脂質異常症の種類

日本動脈硬化学会では、脂質異常症を4つのタイプに分類しています。

  1. 高LDLコレステロール血症:LDLコレステロール(悪玉)が140mg/dL以上
  2. 低HDLコレステロール血症:HDLコレステロール(善玉)が40mg/dL未満
  3. 高中性脂肪血症(高トリグリセライド血症):中性脂肪が150mg/dL以上
  4. 高non-HDLコレステロール血症:non-HDLコレステロールが170mg/dL以上

non-HDLコレステロールは、LDLコレステロールに加え、その他の動脈硬化リスク因子も考慮した指標です。2017年の動脈硬化性疾患予防ガイドラインから、診断基準に追加されました。
(出典:国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)|動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版

セルフチェック

✅ 暴飲暴食をしてしまうことが多い
✅ 運動不足
✅ 肥満
✅ 脂肪分の多い食品を好み、野菜や豆類をあまり食べない
✅ 精神的ストレスを抱えている
✅ 喫煙している
✅ 高血圧や糖尿病の持病がある
✅ 家族性高コレステロール血症である

一つでも当てはまる場合は、生活習慣の見直しや医療機関での検査を検討しましょう。

診断と検査

脂質異常症は、通常健康診断や人間ドックの血液検査で発見されます。当院では、以下の検査を行います。

●問診

生活習慣や家族歴、既往症の有無、喫煙・飲酒・運動習慣などを詳しく確認します。特に、動脈硬化の進行度や心血管疾患のリスクを判断するため、詳細なヒアリングを行います。

●血液検査

  • LDLコレステロール(140mg/dL以上で異常)
  • HDLコレステロール(40mg/dL未満で異常)
  • 中性脂肪(トリグリセライド)(150mg/dL以上で異常)
  • non-HDLコレステロール(170mg/dL以上で異常)

●動脈硬化を調べる検査

  • 心電図検査
  • ABI検査(血圧脈波検査|足首・上腕血圧比)
  • 頸動脈エコー
  • 腹部エコーCT・MRI検査(当院では必要に応じて紹介)

治療方法

1. 食事療法

  • 適正体重の維持
  • バランスの取れた食事(魚・大豆・食物繊維を意識)
  • 脂質の管理(飽和脂肪酸を減らし、DHA・EPAを摂取)
  • 糖質・アルコールの管理(過剰摂取を控える)

2. 運動療法

  • 有酸素運動(ウォーキング・水泳・サイクリングなど)を1回30分、週3回以上
  • 筋力トレーニング(スクワット・軽いダンベル運動など)も併用可
  • 無理のない範囲で継続(急激な運動は避ける)

3. 薬物療法

  • LDLコレステロールを下げる薬:アトルバスタチン、ロスバスタチンなど(スタチン系)
  • 中性脂肪を下げる薬:ベザフィブラート(フィブラート系)
  • コレステロール吸収を抑える薬:エゼチミブ
  • 魚由来成分で中性脂肪を低下:EPA製剤

通院頻度と治療費

  • 通院頻度:1か月に1回が一般的。
  • 診察費用(自己負担割合別)
    • 1割負担 約450~500円
    • 2割負担 約900~1000円
    • 3割負担 約1300~1500円
    • 薬代は薬局にて別途必要

※上記費用は目安です。診察内容により前後しますのでご了承ください。

気になる方は専門医へご相談を

脂質異常症は自覚症状がないまま進行するため、早期発見と予防が重要です。生活習慣の見直しが必要と感じた方、健康診断で指摘を受けた方は、一度専門医にご相談ください。

記事執筆者

きむら内科小児科クリニック

院長 木村仁志

資格
  • 日本内科学会総合内科専門医
  • 日本腎臓学会腎臓専門医
  • 日本透析医学会透析専門医
  • なごや認知症安心安全プロジェクトもの忘れ相談医(登録かかりつけ医)
  • 日本ACLS協会 BLSヘルスケアプロバイダーコース修了(平成27年7月)
  • がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会修了(平成27年9月)
  • こどものみかた小児T&Aコース修了(平成27年10月)
  • かかりつけ医認知症対応力向上研修終了(平成28年11月)
  • かかりつけ医等心の健康対応力向上研修終了(平成28年11月)
所属学会
  • 日本内科学会
  • 日本腎臓学会
  • 日本透析医学会
  • 日本プライマリケア連合学会
  • 日本抗加齢医学会
内科