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要注意!脂質異常症の原因と対策|放置すると危険?

脂質異常症のリスク

脂質異常症は、血液中のコレステロールや中性脂肪のバランスが崩れ、動脈硬化を引き起こす病気です。心筋梗塞や脳梗塞のリスクを高めるため、自覚症状がなくても早期発見・治療が重要です。

脂質異常症の原因

脂質異常症の発症には、生活習慣の乱れが大きく関与しています。

1. 食生活の乱れ

  • 飽和脂肪酸の摂りすぎ(肉の脂身、バター、インスタント食品など)
  • 中性脂肪を増やす食品の過剰摂取(甘いもの、揚げ物、アルコールなど)
  • 食物繊維の不足(野菜、海藻、きのこ、納豆など)
  • 栄養バランスが偏っている食生活

2. 運動不足・肥満

  • 運動不足や肥満はHDLコレステロール(善玉コレステロール)を減らし、脂質異常症を悪化させます。

3. 喫煙・飲酒

  • 喫煙はHDLコレステロールを低下させ、動脈硬化を促進します。
  • 飲酒は適量であれば良い影響もありますが、過剰摂取は中性脂肪の増加や脂肪肝の原因になります。

4. ストレス・睡眠不足

  • ストレスや睡眠不足により、血中脂質を増加させるホルモンが分泌されます。

5. 基礎疾患

  • 糖尿病、甲状腺機能低下症、クッシング症候群、ネフローゼ症候群などが原因となることもあります。

脂質異常症の種類

脂質異常症は、原因によって「原発性脂質異常症」(遺伝的要因)「続発性脂質異常症」(生活習慣・基礎疾患の影響)に分けられます。

また、以下の3つのタイプに分類されます。
高コレステロール血症(LDLコレステロールが高い)
高中性脂肪血症(中性脂肪が高い)
低HDLコレステロール血症(HDLコレステロールが低い)

脂質異常症の症状とリスク

脂質異常症は自覚症状がほとんどありませんが、放置すると動脈硬化が進行し、次のような疾患のリスクが高まります。

狭心症・心筋梗塞(胸の締め付け感、強い痛み)
脳梗塞・脳出血(顔のゆがみ、片側の手足のしびれ、言葉が出にくい)
動脈硬化の進行による全身の血流障害

特に、以下のような症状がある場合は注意が必要です。
☑ 食後の強い眠気
☑ 胸の違和感や圧迫感(狭心症の可能性)
☑ 少し歩くと足が痛くなるが、休むと治る(間欠性跛行)
☑ 耳たぶに深いシワができる(動脈硬化のサインとされる)

気になる症状がある場合は、専門医にご相談ください。

脂質異常症を予防・改善するには?

食生活の見直し

  • 肉の脂身・揚げ物・砂糖が多い食品を控える
  • 野菜や海藻、食物繊維を積極的に摂る
  • 塩分・糖分を控え、バランスの取れた食事を心がける
  • 管理栄養士の指導を受け、適切な食事管理を行う

適度な運動を習慣にする

  • ウォーキングやストレッチなど軽い運動を継続する
  • 1日30分程度の運動を目安に

ストレスを溜めない・睡眠をしっかり取る

  • リラックスできる時間を確保し、ストレス管理を意識する

禁煙・節酒を心がける

  • タバコは動脈硬化を進行させるため禁煙を推奨
  • 飲酒は適量を守り、過剰摂取を避ける

お酒はどのくらいまで飲んでいい?

  • 男性:1日20~30mL以下(日本酒1合、ビール中瓶1本、ワイン2杯程度)
  • 女性:1日10~20mL以下

飲酒の習慣がある方は、量と頻度に注意し、週に2回ほど休肝日を設けることをおすすめします。

脂質異常症が気になる方へ

健康診断で脂質異常症を指摘された方、動脈硬化が心配な方は、早めの対策が重要です。脂質異常症は自覚症状がないまま進行し、気づかないうちに心筋梗塞や脳梗塞のリスクを高める可能性があります。

生活習慣の改善や適切な治療により、進行を防ぐことができます。特に、管理栄養士の指導のもとで食事改善を行うことで、より効果的な予防・治療が可能です。気になる症状がある場合は、専門医や管理栄養士にご相談ください。当院では管理栄養士が在籍しております。あなたに合った食生活プランをご提案可能ですのでお気軽にご相談ください。

脂質異常症 よくあるご質問

健康診断で脂質異常症の指摘をされた場合は、症状がなくても病院に行かないとダメですか?

一度は受診をおすすめします。
前述した通り、「脂質異常症」自体に症状はありません。だからこそ、症状が出てきた時には、病状が相当進行している可能性があります。また、自覚症状が出てきた段階からの治療では、できる治療が限られてしまうこともあります。
少しでも早くみなさんに「早期発見・早期治療の重要性」を気づいていただき、早い段階から予防に取り組んでいただきたいです。
私たちはそのお手伝いをしたいと思っていますので、お気軽にご来院ください。

脂質異常症における生活習慣の改善ポイントは?

次のことを意識して、日常生活を見直してみましょう。

  1. 禁煙(受動喫煙の防止も含む)
    喫煙は血管を痛め、動脈硬化の進行を促進させることになります。
  2. 食事管理
    バランス良い食事、飽和脂肪酸やコレステロールの摂取制限、食物繊維の摂取、食塩制限など、食べ方にも工夫しましょう。
  3. 体重管理
    日本肥満学会ではBMI25以上を肥満と定義。25以上あれば減量しましょう。
  4. 運動・身体活動量
    有酸素運動を中心に、運動の習慣をつけましょう。
  5. 飲酒
    アルコール摂取量を制限しましょう。
運動療法での注意点はありますか?
  • 運動前・後には準備運動や整理運動を行いましょう
  • 患者さんの基礎体力・年齢・体重・健康状態などを踏まえて設定された運動量を行うようにしましょう。
  • 冠動脈疾患・呼吸器疾患・間欠性跛行などの持病がある方や心疾患リスクが高い方
  • ご高齢の方は、主治医と相談してから運動を始めるようにしましょう。骨関節疾患がある方は整形外科医へあらかじめ相談ください。
  • ただし、次のような持病がある場合には、運動を控えましょう。
    重篤な心疾患(急性冠症候群、重症心不全、重度の大動脈弁疾患)、急性心膜・心筋炎、重症不整脈、コントロールの極端に悪い糖尿(空腹時血糖250mg/dl以上または尿中ケトン体中等度以上陽性)や高血圧、眼底出血を合併した糖尿病性増殖性網膜症、尿毒症または透析療法導入直前の高度な腎不全、急性感染症、高度の糖尿病性自律神経障害、糖尿病性壊疽など

具体的にはどのような食事が良いのでしょうか?

脂質異常症の食事療法としては、摂取する合計のエネルギー量、脂質、炭水化物、コレステロール、アルコールなどを制限します。

●合計のエネルギー量

・摂取エネルギーの計算方法
適正エネルギー摂取量=標準体重×25~30kcal
標準体重=身長(m)×身長(m)×22

●脂質

飽和脂肪酸(動物性脂肪)を少なくし、植物性、魚肉性脂肪の良質の油を選びます。ショートニングやマーガリンなどトランス脂肪酸はLDLコレステロールを増やすので、摂取を控えます。

●炭水化物

「炭水化物の量は摂取する合計のエネルギー量の50%程度にしましょう」ということが日本栄養士会から言われています。また、単糖類は体内への吸収のスピードが速く余分な糖質は中性脂肪へ変わります。菓子やジュースなどの単糖類はなるべく控え、果物は1日80~100kcal以内とし、砂糖などは調味料のみの使用にしましょう。

エネルギー量の目安

・ご飯茶碗普通盛り1杯 150g=約250kcal
果物:りんご:半分、バナナ:1本、みかん:2個、柿:1個、ぶどう:1/3房、いちご:10粒、もも:1個(全て80kcal)

●コレステロール

コレステロール量を現状より減らす必要があります。コレステロールが多く含まれるのは、 鶏レバー、たらこ、マヨネーズ、卵・バターなどを使った料理や、菓子類などです。

●アルコール

アルコールは、肝臓で中性脂肪の合成を促進し、少量でも中性脂肪を上昇させます。また、アルコールは食欲増進作用があり、飲酒時におつまみやその後のご飯の食べ過ぎの原因にもなります。また、肝臓に溜まった中性脂肪は脂肪肝の原因にもなります。

アルコール類のエネルギー量と糖質
  • ビール(5%、500ml):エネルギー量200kcal 糖質15.5g
  • チューハイ(6%、 420ml):エネルギー量200kcal 糖質 15.1g
  • 日本酒(15%、170ml):エネルギー量175kcal 糖質 6.1g
  • ワイン(12%、210ml):エネルギー量200kcal 糖質 3.2g
  • 焼酎(25%、100ml):エネルギー量146kcal 糖質 0g

記事執筆者

きむら内科小児科クリニック

院長 木村仁志

資格
  • 日本内科学会総合内科専門医
  • 日本腎臓学会腎臓専門医
  • 日本透析医学会透析専門医
  • なごや認知症安心安全プロジェクトもの忘れ相談医(登録かかりつけ医)
  • 日本ACLS協会 BLSヘルスケアプロバイダーコース修了(平成27年7月)
  • がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会修了(平成27年9月)
  • こどものみかた小児T&Aコース修了(平成27年10月)
  • かかりつけ医認知症対応力向上研修終了(平成28年11月)
  • かかりつけ医等心の健康対応力向上研修終了(平成28年11月)
所属学会
  • 日本内科学会
  • 日本腎臓学会
  • 日本透析医学会
  • 日本プライマリケア連合学会
  • 日本抗加齢医学会
内科